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2007年01月22日(月) 23時08分

不二家社長交代、信頼回復へ課題山積 実態把握これから朝日新聞

 期限切れ原材料使用を発端に激震が続く不二家で、22日、約100年続く同社の歴史上で初の創業家出身者以外の桜井康文氏(58)が7代目社長に就任した。同族支配への強まる批判に押されたとはいえ、3カ月は留任するとした藤井林太郎前社長を前倒しで退任させ、とりあえず再生への第一歩を踏み出した。ただ、問題の全体像の把握さえもこれからで、新社長の前には課題が山積みだ。

就任後、記者会見する不二家の桜井康文新社長(中央)。左は藤井林太郎前社長=22日午前、東京都港区で

 「一刻も早く自らの手で生まれ変われるよう全力を尽くしたい」

 22日、東京都内のホテルであった記者会見で桜井新社長は、用意した文書を淡々と読み上げた。藤井前社長から内示を受けたのが20日。会見では「就任したばかりで……」を連発した。十分な準備も整わない中での出発だが「とりあえず、再生に向けて動きだした」と金融関係者は評価する。

 桜井氏を知る業界関係者は「品質に人一倍うるさい技術屋。人間的にもバランスがとれた人」と、混乱する不二家の立て直し役としては適任と話す。今回の事件の発端で、隠蔽(いんぺい)を疑われている、埼玉工場での期限切れ原材料の使用が報告された会議のメンバーでなく、関与が薄いとされることも決め手となった。

 しかし、人選は消去法だ。桜井新社長より上席取締役は藤井前社長を除き4人。常務の2人は経営中枢として責任を問われる立場で、ほかの2人は藤井家出身だ。「藤井前社長の下で長く働いた人。その呪縛から逃れられるのか」(業界関係者)という声もある。

 桜井氏は会見後、厚生労働省と農林水産省を訪ね、安全対策や原因究明、再建策に取り組む、と説明したのに対し、「事実関係の解明が信頼回復に不可欠」(厚労省の藤崎清道・食品安全部長)との注文がついた。

 信頼回復には第三者による調査が不可欠だ。初会合を開いた「外部から不二家を変える」改革委員会の委員長を務める田中一昭拓殖大教授は「週に1回は会合を開き、場合によっては取締役会の決定をひっくり返す」と意気込む。その一方で「会社があんな状況でスケジュールも立てられない」と漏らす。不二家商品を撤去した流通側は「総合的に取り組みを判断しなければ販売再開はできない」(セブン&アイ・ホールディングス)、「委員会を作ったからすべてOKとはいかない」(イオン)と、厳しい姿勢を崩してはいない。

 「信頼が地に落ちている以上、単独で再生するのは難しいのでは」(食品業界大手)との指摘は多い。菓子大手で不二家の株主でもある森永製菓は、23日にも首脳が桜井新社長と会談し、今後の支援策などについて話し合う方針。製パン・菓子大手の山崎製パンも「話があれば伺う」(首脳)とする。主力のりそな銀行も水面下で事業立て直しに向けた動きを進めるが、「事業再開が再生計画立案の大前提」(関係者)との立場で、前途は多難だ。

http://www.asahi.com/business/update/0122/145.html