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2007年01月15日(月) 21時29分

不二家社長が辞任を表明 期限切れ使用、新たに18件朝日新聞

 大手菓子メーカー「不二家」(本社・東京)は15日、牛乳や卵など期限切れの原料を使用していた例が新たに18件あったなどとする同社の調査結果を発表した。これまではパート社員など「個人の判断」としていたが、上司が使用を指示したり、工場長ら幹部が事実を知りながら容認したりしたケースも判明、組織ぐるみの関与が浮き彫りになった。記者会見した藤井林太郎社長は「組織的と受け止められてもやむを得ない。会社の体質に重大な問題がある」と述べ、責任をとって近く辞任する意向を表明した。

辞任する意向を表明し、頭を下げる不二家の藤井林太郎社長(中央)。手前は前波知幸生産本部品質・環境管理担当課長=15日午後、東京・銀座の不二家本社で

 消費期限や賞味期限切れ原料を使っていたのはいずれも埼玉工場(埼玉県新座市)。過去7年間に乳製品、卵類、ジャムなど出荷回数で18件だった。このうち5件は1日の期限超過だったが、ほかは何日過ぎていたかわかっていない。2件については同工場の上司が使用を指示していた。

 昨年10〜11月に消費期限が1日切れた牛乳でシュークリーム計1万6000個を出荷したケースなどすでに判明しているものと合わせ、同工場での期限切れ原料使用は出荷回数で計30件となった。

 プリンの消費期限を社内基準より1日長く表示していた問題では、これまで「数十個出荷」としていたが、04年から06年10月にかけて頻発していたこともわかった。出荷個数は不明。担当者から工場長まで「関係者全員」が事実を知りながら容認していたという。

 このほか札幌工場でも、昨年5月から7月にかけて、洋菓子から法令基準を上回る細菌が検出されるケースが6件あったことも判明した。

 同社は11日、問題発覚を受けて洋菓子の販売休止を発表。13日から埼玉工場などで調査していた。これまで「再雇用した社員が個人の判断でやった」と説明していた。

 会見で藤井社長は「社会の不安を招いたのは私の責任。品質保証と信頼確保の体制を作った上で辞任する」と話した。問題の原因については「営業優先やリストラ・合理化も要因かもしれない」と述べた。

 九州(佐賀)、野木(栃木)、泉佐野(大阪)の3工場でも調査中で、グループ会社が運営する2工場(山梨、山形)についても新たに調査する方針だ。

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■新たに分かった問題

【埼玉工場】

・99〜06年に消費期限を過ぎた牛乳、生クリームを使った例が9件、卵類が6件、賞味期限を過ぎたジャムなどを使った3件が判明。うち2件は工場の上司が指示

・04年6月にプリンを大阪・泉佐野工場で生産し、埼玉工場で仕上げをする態勢になってから、消費期限を社内基準より1日長く表示する違反が頻発(06年10月まで)。工場長ら関係者全員が容認。シュークリームでも同様の表示違反

・細菌数が基準を大幅に超え、1グラムあたり100万個あった「シューロール」を昨年6月に113本出荷したと11日に発表したが、実際の細菌数のデータは約6倍の640万個だった。出荷数は678本

【札幌工場】

・06年5月中旬〜7月下旬に製造した洋菓子のうち、細菌の検査基準を超えるものが6件

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 〈キーワード:不二家〉 1910年に横浜で創業した洋菓子業界3位の老舗(しにせ)。本社は東京・銀座。マスコット人形の「ペコちゃん」「ポコちゃん」がシンボル。ケーキなどの洋菓子販売と、スーパーやコンビニエンスストアで売るチョコレートなどの卸売り事業が2本柱。直営店は全国96店舗、フランチャイズ707店舗、レストラン・カフェ91店舗を展開している(06年末現在)。洋菓子工場は埼玉、札幌など全国に5カ所。ここ数年は業績不振が続き、06年3月期連結決算は赤字。06年5月に再建計画を発表した。

http://www.asahi.com/national/update/0115/TKY200701150247.html