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2007年01月11日(木) 23時40分

原発データ改ざん 測定地点替え全機で朝日新聞

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所で温排水の温度差データが改ざんされていた問題で、同発電所が温度の測定地点を全7機で変更していたことが日、同社が発表した報告書で分かった。同社は改ざんを行った温度差データは「目標値」で、法令違反などには当たらないと説明してきたが、実際には、データは国の保安規定にも引用されており、規定違反にあたる可能性も出てきた。

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 改ざんされたのは、発電に使った蒸気を冷やす海水の取水と排水の温度差。東電はこれまで、1号機と4号機については測定地点を差し替えていたことを認めていた。

 1号機では94年5月、「海水には温度差があり、データが不安定になる」との理由で、海に隣接する取水口から建物そばの「復水器入り口」に測定地点を差し替えた。同年月からは放水口の温度計も復水器出口の温度計に差し替えた。さらに、温度差が7度を超えないよう、プロセス計算機のプログラムを0・3度低くなるようにデータを改ざんしていた。

 4号機は02年2月から、同じく測定地点を差し替え、温度差データを改ざんしていた。

 だが、今回の報告書では、95年からプログラムの改ざんがあった1号機と4号機以外でも温度測定地点を復水器出入り口に差し替えていたことがわかった。同社は「復水器出口のデータはデジタルで読み取りやすかったためではないか」と推測している。

 データは、県の「温排水等漁業調査結果報告書」に利用されていたが、県には測定位置の変更を報告せず、「放水口」と記載していた。同原発の千野宗雄所長は「今後のデータの測定地点については県と協議したい」としている。

 また、同社は改ざんされた温度差の7度は社内基準の「目標値」と説明してきたが、法律に基づく保安規定による環境影響調査書や原子炉設置許可申請書などにも引用されていた。同社は、保安規定による「制限値」となるかどうか検討している。

 また、改ざんは98年3月の技術担当副所長をトップとする「信頼性向上検討委員会」(約30人)でも明らかになっていた。同社の調査によると、「(数十億円の)膨大な費用がかかる」「(保安院などの)規制当局との折衝が必要」との理由で放置された。

 報告書では「安全管理に直接かかわらない事項であり、データ改ざんを『補正として許される』と思い、いつの間にか忘れ去られていた。技術者倫理教育として社会の信頼に応えるという部分が弱かった」として、組織運営に問題があったことを認めた。

 この日、同社原子力・立地本部の武藤栄副本部長が県庁を訪れ、鶴巻嗣雄危機管理監に報告書を手渡した。武藤副本部長は「経営の根幹にかかわる深刻な問題。会社一体となって対応していきたい」とあいさつ。鶴巻危機管理監は「報告書だけではなく行動で示すことが何よりも必要」と話した。報告書は、2月にある有識者による技術委員会で精査したいとした。

http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000000701110005