悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年12月30日(土) 01時47分

12月30日付・読売社説(2)読売新聞

 [新労働制度]「導入には意見の幅がありすぎる」

 働き方が多様化しているのは事実だが、鋭い対立を押し切ってまで、直ちに実現すべき制度だろうか。

 厚生労働省の労働政策審議会が、「自由度の高い働き方」という新しい労働制度の導入を盛り込んだ報告書をまとめた。

 同省は労働基準法改正案として年明けからの通常国会に提出する方針だ。しかし、真に緊急性のある、全体として労使に有益な制度かどうか、疑問が多い。経営側の意見も割れており、問題は単純でない。さらに議論を尽くすべきだ。

 焦点となっているのは、米国で「ホワイトカラーエグゼンプション」と呼ばれて普及している制度である。

 管理監督者と同じように、自ら働く時間を調整できる。1日8時間・週40時間という法定労働時間も適用されない。残業という概念がない働き方だ。

 日本経団連が最優先で導入を求めてきた。「頭脳労働など成果に応じて処遇する仕事や、情報機器の発達で労働時間にしばられない仕事が増えている。工場労働をモデルにした現在の規制を一律にかけるのは適切でない」と説明する。

 だが、同じ経営者団体の経済同友会は先月、「仕事の質や量、日程にまで裁量のある者は多くない」として、今の時点での制度化に疑問を呈した。現場から見た実感でもあるだろう。

 一方、日本労働組合総連合会は「長時間労働を助長する」「サービス残業の合法化につながる」と真っ向から反対している。審議会でも労使の委員の調整が最後まで難航し、厚労省が事務局案を押し通す形で決着した。

 確かに、仕事の効率が高まり、より能力を発揮できる場合もあるだろう。しかし、企業が賃金抑制と長時間労働を正当化する危険性もはらんでいる。

 このため、厚労省案は、「業務上の重要な権限と責任を相当程度伴う地位にある者」など、対象者の要件を設けた。今後、年収の基準も決めるというが、大企業と中小企業では同じレベルで考えられない問題でもある。

 就労環境が激変し、労使の対立という旧来の構図だけではとらえられない面もあるだろう。その意味で、経営側の見解の相違は生産的な論議につながる。制度化の影響について、労働側も電機や流通など産業ごとに具体的に検討すれば、発言の重みも増すのではないか。

 少子化で人材の確保が難しくなってきたと言われる。持続的に企業を発展させていくためにも、法制化の論議とは関係なく、働きやすい環境づくりを労使が一体で進めていくことも大切だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061229ig91.htm