2006年12月30日(土) 11時01分
この１年：事件・事故 問われた企業の安全責任 ／東京（毎日新聞）
マンションのエレベーターに高校生が挟まれ死亡した事故や、パロマ製湯沸かし器による一酸化炭素中毒死事故など、安全に対する企業の責任が問われる事故が目立った。耐震データ偽造事件は元建築士のほか建設業者やデベロッパーらが刑事責任を問われたが、捜査の結果、組織的詐欺の構図は崩れた。
入札を巡る不正が相次いだ。都下水道局発注工事では都職員が業者からわいろを受け取っていたほか、国土交通省北首都国道事務所、江戸川区、東京大学医学部付属病院でも発注元が不正に漏らした入札情報をもとに談合が繰り返されていた。
日本スケート連盟の背任事件では、元会長が裏金を連盟理事に分配していたほか、自らも数千万円をマンション購入費に充てるなど連盟を私物化していた。
暴力団の記事を書いたルポライター溝口敦さんの長男が山口組傘下団体の関係者に刺され全治約２週間のけがを負った。また住吉会系組長が信用金庫から不正融資を受けていたほか、山口組後藤組組長が東証１部上場の菱和ライフクリエイトの社長とともにビルの乗っ取りで逮捕されるなど、暴力団が企業を資金源にしている実態が浮かんだ。
大手精密測定機器メーカー「ミツトヨ」が核開発に転用可能な三次元測定器計５台をシンガポール子会社に不正輸出した事件では、うち１台がリビアで見つかり「核の闇市場」の存在が改めて浮き彫りになった。
オウム真理教（アーレフに改称）は、上祐史浩代表を支持する「上祐派」と、原点回帰を打ち出す「反上祐派」が分裂状態になっている。
耐震データ偽造事件は、構造計算書を改ざんした元１級建築士のほか、マンション販売会社や建設業者、検査機関の社長らがそれぞれ個別の容疑で逮捕された。
中学２年の男子生徒が３月、世田谷区の自宅に放火。両親が重傷を負い、生後２カ月の妹が死亡する痛ましい事件があった。男子生徒は「さぼっていないのに、父親が『学校へ行け』としつこかった」と動機を語った。
６月に渋谷区で発生した「カリスマ美容外科医」の長女の女子大生誘拐事件は、広域強盗団のメンバーでもある日中韓の男３人が実行。日本人と来日外国人が連携する最近の凶悪事件の構図を改めて浮き彫りにした。
高校生が死亡したエレベーター事故や、パロマ工業製湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故は、点検・修理業者だけでなく、メーカー側の責任も焦点に、業務上過失致死容疑での捜査が続いている。
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◇今年の主な事件・事故
１・１８ 転売目的で拳銃などを密輸入したとして暴力団組員（４４）らを銃刀法違反容疑で逮捕。８月には密輸を指示した指定暴力団稲川会系組長（４３）を同容疑で逮捕。同組関係先から機関銃や手りゅう弾を押収した
２６ 東大和市の自宅で「一夫多妻」の集団生活に加わるよう女性を脅したとして、１１人の女性と生活していた無職の男（５７）を脅迫容疑で逮捕。３月には元妻（２６）とともに強要未遂容疑で再逮捕
２・ １ 住宅リフォーム会社「サムニン」グループによる詐欺事件で、グループトップで元親会社の社長（３８）を詐欺容疑で逮捕
２１ 瑞穂町発注の道路舗装工事の指名競争入札で談合をしたとして建設会社社長（４９）ら業者３人を競売入札妨害容疑で逮捕
２３ 地村保志さんと蓮池薫さん両夫妻の拉致事件で、北朝鮮の元工作員の２人に国外移送目的略取容疑の逮捕状
３・ ２ 「興産信用金庫」が暴力団が関係する会社に４億円を不正融資したとして同信金会長（７１）と指定暴力団住吉会系組長（６８）ら７人を背任容疑で逮捕
５ 港区北青山の国道の路上で、元ビル管理会社役員（当時５８歳）が２人組の男に刃物で刺され死亡
９ 世田谷区のマンション１室から出火し、夫婦が重傷を負い、生後２カ月の長女が死亡。中学２年の長男（１４）が現住建造物等放火容疑で逮捕され「厳しい父を恨んでいた」と供述した
１７ 豊島区のマンション１室が焼け、派遣型風俗店経営の男性（４１）が遺体で発見。３日後に強盗殺人・放火事件と断定し捜査し４月１７日、元従業員の男（２４）を詐欺容疑で逮捕、５月１０日、強盗殺人容疑で再逮捕
３１ １〜３月の振り込め詐欺の被害が急増。全国では減少傾向にある中、都内では逆に前年同期比で２．３倍増の４７３件、被害総額は９億８７０５万円に上った
４・１９ 都下水道局が発注する工事の入札で最低制限価格を教えた見返りに現金百数十万円のわいろを受け取ったとして、同局南部建設事務所職員（３４）を収賄容疑で、業者側の役員２人を贈賄容疑で逮捕
２４ 大阪市内の中華料理店店員、原敕晁（ただあき）さん（行方不明時４３歳）拉致事件で、北朝鮮の元工作員２人に国外移送目的拐取などの容疑で逮捕状
２６ 耐震データ偽造事件で、姉歯秀次・元１級建築士（４８）や木村盛好・木村建設元社長（７４）、藤田東吾イーホームズ社長（４４）ら８人を逮捕
５・ ８ ３月に刺殺された元ビル管理会社役員が管理していた渋谷区内のビルを不正取得していたとして指定暴力団山口組後藤組組長（６３）と菱和ライフクリエイト社長（５２）ら１０人を電磁的公正証書原本不実記録容疑などで逮捕
１２ 北朝鮮ルートで覚せい剤数百キロを密輸したとして、韓国籍の男（５９）や暴力団組員らを逮捕。０１年１２月に鹿児島・奄美大島沖で沈没した北朝鮮工作船への関与も明らかになった
１７ 首都圏中央連絡自動車道（圏央道）の建設工事を巡り、測量会社に予定価格を教えたとして、発注元の国土交通省北首都国道事務所の副所長（５６）を競売入札妨害容疑で逮捕。６月６日に収賄容疑で再逮捕
１７ 耐震データ偽造事件で、小嶋進・ヒューザー元社長（５２）を詐欺容疑で逮捕。強度不足を知りながらマンション代金をだまし取ったとされた
３０ ルポライターの溝口敦さん（６３）の長男（３３）を刃物で刺してけがを負わせたとして、指定暴力団山口組傘下団体の関係者の男２人を傷害容疑で逮捕
６・ ３ 港区のマンションで都立高２年の男子生徒（１６）がエレベーターと天井の間に挟まれ死亡。業務上過失致死容疑で捜査
１３ 診療報酬を担保に医療法人に高金利で貸し付けを行っていたとして、貸金業「店舗ファイナンス」社長（４４）ら３人を逮捕。５５医療機関が返済に行き詰まり、廃業に追い込まれていた
２６ 渋谷区鉢山町の路上で、美容外科医の大学４年の長女（２１）が誘拐され、身代金３億円を要求する電話。２７日未明、長女は川崎市内のマンションで無事保護。中韓日の男３人を監禁容疑で現行犯逮捕。広域強盗事件への関与も明らかに
７・１４ パロマ工業製瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故が８５年以降、全国で１７件発生し、１５人が死亡していたと同社が発表。その後、事故は２８件、死者２１人であることが明らかに。警視庁は公訴時効を迎えていない０５年１１月の事故について業務上過失致死容疑で捜査。８月１０日には経済産業省が立ち入り検査、同月２８日には回収命令
１９ 脱法（違法）ドラッグ「ラッシュ」の販売を巡り、全国で初めて都内のアダルトショップ経営者（３８）を薬事法違反容疑で逮捕。のちに、輸入元の業者らも摘発
２０ オウム真理教（アーレフに改称）が上祐史浩代表（４４）を支持する上祐派と、反上祐派に分かれ、別会計で活動していることを確認
８・１０ 「ニコン」の元技術系社員と在日ロシア通商代表部員を窃盗容疑で書類送検。元社員が開発段階の光通信関連機器を部員の求めに応じ提供した疑い。軍事転用された可能性
１４ 千葉県浦安市と江戸川区の都県境を流れる旧江戸川で、クレーン船が高圧送電線に接触し、首都圏の１３９万戸が停電
２５ 大手精密測定機器メーカー「ミツトヨ」の社長ら計５人を外為法違反で逮捕。核開発に転用可能な三次元測定機を無許可でシンガポールの子会社に輸出した疑い
９・ ７ 富士ゼロックスシステムサービス（千代田区）から地方自治体の戸籍情報を持ち出し、同社を脅したとして協力会社社員の男（２５）ら２人を逮捕
１３ 雇用創出のための国の助成金５００万円をだまし取ったとして元日本経済新聞社販売局の部長級社員（５８）を詐欺容疑で逮捕
２８ ＪＲ東京駅の鍛冶橋変電所で配電盤が焼けるボヤ。京葉線の信号系統への送電が停止し、１６万７０００人に影響
１０・ ３ 日本スケート連盟の元会長（７５）と元専務理事（６９）を背任容疑で逮捕。１１月には元会長を業務上横領容疑でも逮捕した。元会長が会長職にあった９８年からの６年間で、連盟の基本財産は約３億円減少した
１７ 塗装工事の発注で入札情報を漏らした見返りに現金約４００万円を受け取ったとして江戸川区都市開発部係長（５６）を収賄容疑で逮捕
２６ 約１６００人の投資家から３２０億円の投資金を集めたジェスティオン・プリヴェ・ジャポンの元社長（４３）を詐欺容疑で逮捕
１１・ １ 東京大学医学部付属病院発注の空調設備のメンテナンス業務を巡って、入札予定価格を漏らしたとして同病院職員（３０）と業者社員ら計４人を競売入札妨害容疑で逮捕。１２月には同病院係長（４４）も同容疑で逮捕
２７ 在日本朝鮮人総連合会（朝鮮総連）東京都本部など関係先を薬事法違反容疑で家宅捜索。在日朝鮮人女性（７４）らが無許可で薬品を譲渡した疑い
１２・ ４ 羽村市の小学校教諭（３３）が交通事故で死亡した児童らの写真をホームページに無断転載したとして、遺族らが告訴・告発状を提出
４ 近未来通信を詐欺容疑で家宅捜索。同社は事業の実態がないにもかかわらず投資家約２０００人から約４００億円を集めたとされる。２０日には破産手続き開始が決まった
１６ 新宿区西新宿の路上でゴミ袋に入った男性の胴体部分の遺体発見。死体遺棄事件で捜査
１８ 溝口敦さんの暴力団組長に関する記事を巡る長男襲撃事件で、地裁八王子支部が指示役の男に懲役３年６月の判決。実行役２人も８月、同支部が実刑判決
２１ 多摩市連光寺の元都庁職員の男性（６６）宅の床下からコンクリートに埋められた元職員の遺体発見。交際相手の自称作家の女（４０）と同居の無職の男（６４）を詐欺容疑で逮捕。殺人・死体遺棄への関与を捜査
１２月３０日朝刊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061230-00000000-mailo-l13