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2006年12月29日(金) 00時00分

余部鉄橋事故から20年 悲しみ無念 今も朝日新聞

 山あいを抜ける赤い巨大な鉄橋が鉛色の空にかすんだ。降り出した雪が、瞬く間にあたりを真っ白に変えた。12人が死傷した余部鉄橋列車転落事故から20年になった28日、シケで大荒れの日本海に面した現場は、あの日と同じ身を切るような寒さに襲われた。慰霊碑には、犠牲者を悼む人の列が続いた。愛する人を突然奪われた遺族たちは、こみあげる無念さに唇をかみしめた。

 事故では、カニ加工場が転落列車の下敷きになり、従業員の女性5人と車掌1人が死亡した。犠牲者の女性は地元から働きに出ていた人が多かった。

 母親の北村加代子さん(当時38)を亡くした忠彦さん(29)と祥彦さん(27)は、降りかかる雪を払いのけようともせず、慰霊碑を見つめ続けた。気温は2度まで下がっていた。コートを手にすることもなく、寒風の中を立ち続けた。

 「風が強く、危ない。家でじっとしておけ」。事故直後、小学生だった2人は外へ出ることが許されなかった。忠彦さんは、家の窓越しに鉄橋を見た。いつもと違う光景が目に飛び込んできたのを鮮明に覚えている。

 加代子さんは犠牲者の中で、最も若かった。あれから20年。忠彦さんは「アッという間だった」。母の死をすぐには理解できなかった祥彦さんは「長かった」と話した。

 山崎逸枝さん(73)も慰霊碑に手を合わせ、犠牲者の冥福を祈った。事故で命を落とした藤原静子さん(当時49)は夫の妹だった。「やさしい人で、思い出は色あせることがありません」と話していた。

 法要前に慰霊碑を訪れる人も多かった。森沙也翔(さ・や・か)さん(18)は、事故で祖母の岡本光子さん(当時55)を亡くした。「両親は仕事。私たちでおばあちゃんのお参りにきました」と、線香を手向けていた。

 法要が終わった後、遺族連絡会会長の岡本倫明さん(72)は、空模様を気にしながら、「なぜか、命日のこの日は天気が荒れ模様のときが多い」とつぶやいた。そして「私たちの悲しみと無念さは消えさることがない20年だった。供養を通じて、人の命を大切にする意味を分かってもらいたい」と話していた。

http://mytown.asahi.com/hyogo/news.php?k_id=29000000612290004