悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年12月28日(木) 00時00分

なれあい/旧愛知川町入札妨害事件 下朝日新聞

【入札制度改革】
【町と業者崩れた「和」】

 「今年は暖冬予想。雪が少なければいいが……」。愛荘町のある幹部は、本格的な冬を前にこう漏らす。

 大雪に見舞われた昨冬、旧愛知川町の町道の除雪作業は地元の建設業者9社が担った。しかし2月に旧秦荘町と合併し、愛荘町になって迎えた今冬は事情が違う。旧愛知川地区の除雪を引き受けたのはわずか2社で、頼みは町所有の除雪車1台しかない。

 除雪作業は「業者に大きな利益はない」(愛荘町幹部)。地域に貢献する除雪作業を今回、多くの業者が拒んだのは、合併後の入札制度改革に対する「しっぺ返し」と、この町幹部はみている。

     ■

 3月の町長選で当選した村西俊雄町長の公約のひとつが、談合の温床とされる指名競争入札の数を減らし、町外業者も参入できる条件付き一般競争入札を導入することだった。

 「よそ者に食い物にされる」。旧愛知川町の業者は旧秦荘町の業者と町役場を度々訪れ、村西町長に「町発注工事は町内業者のみの指名競争入札とし、すべての業者に均等に行き届くようにしてほしい」と文書で申し入れた。除雪については「(一般競争入札導入の)一方で協力しろと言われても無理だ」と町幹部に迫ったという。

 だが町は6月に一般競争入札を導入。愛知川町時代から続いていた町と業者の「和」は崩れた。

     ■

 7月以降、大規模な土木工事の一般競争入札は8件あり、うち4件を町外業者が落札。愛知川町時代は99%台だった平均落札率も、導入後の一般競争入札では79%となった。

 9月末にあった道路整備工事の入札では、参加した地元9社のうち、8社が最低制限価格を下回り失格になった。町担当者は「赤字覚悟で落札しようとしたのでは」。ある業者は「町外業者の参入で、談合が難しくなった。仲間内では『この先5年も持たない』という話ばかりだ」と嘆く。

 全国市民オンブズマン連絡会議の大川隆司弁護士は「少ない公共工事を仲良く分配しようとする愛知川の談合は、地方でよくある典型的な談合」と指摘する。

     ■

 官製談合事件が各地で相次ぐなか、全国知事会が設置したプロジェクトチームは15日、談合防止の指針案に「指名競争入札の原則禁止」を掲げた。指名競争入札が談合の温床という考え方が主流になりつつある。

 大型工事を受注できる旧愛知川町の「1号業者」5社のうち、竹山建設と飛鳥工務店の幹部が逮捕され、竹山建設は町から2年間の指名停止処分を受けた。飛鳥工務店も同様の処分となる見通しだ。残り3社も県警の調べに談合があったと認めており、1号業者すべてが町の工事を当分受注できなくなる恐れもある。

 「町内の業者がまんべんなく潤うようにしたかった」。旧愛知川町の元助役、石部稔英容疑者(67)=競売入札妨害容疑で再逮捕=は、県警の調べに、こう供述した。しかし思惑とは裏腹に、元助役や業者が最も避けたかった「自由競争」が始まりつつある。

 地元のある業者は事件後、こう漏らした。

 「談合は業者が群がって利益をむさぼると思われているが、実態は談合で何とか生き延びる利益を手にしているだけだったのに」

http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000000612280003