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2006年12月26日(火) 00時00分

奥西死刑囚の再審取り消し 名張毒ぶどう酒事件 再審開始決定に対する検察側の異議が認められ、支援者に「不当決定」の垂れ幕を掲げる弁護士=26日午前10時8分、名古屋高裁前で(岡本沙樹撮影) 中日新聞

 三重県名張市で1961(昭和36)年3月、農薬入りぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡し、12人が中毒症状になった「名張毒ぶどう酒事件」の異議審で、名古屋高裁刑事二部の門野博裁判長は26日、「自白の信用性は高く、確定判決の事実認定に疑問は生じない」として、奥西勝死刑囚(80)=名古屋拘置所在監=の再審開始決定に対する検察側の異議を認める決定をした。

 昨年4月の同高裁刑事一部の再審決定を覆す判断で、死刑執行の停止も取り消された。いったんは広がった奥西死刑囚の裁判がやり直される可能性は再び狭まった。弁護側は決定を不服として1月4日、最高裁に特別抗告する。

 死刑が確定した事件で過去に再審が認められたのは免田、財田川、松山、島田の4事件。いったん認められた再審が取り消されたのは免田事件に続いて2度目。

 異議審では、毒物の鑑定結果が最大の争点となった。弁護側が新証拠として提出した成分分析では奥西死刑囚が混入を自白した農薬(ニッカリンT)をぶどう酒に混入すると不純物が残るのに、事件で使われたぶどう酒の飲み残しからは不純物が検出されていない。

 この点について、決定理由で門野裁判長は「農薬が混入されてからの経過時間やその時の気象条件などによって、不純物が検出されないこともあり得る」と指摘した。

 その上で「事件当時、飲み残しを検査するまで時間がかかっており、不純物が検出されなかったとしても決しておかしくはない。ニッカリンTが犯行に使われた可能性は十分にある」と認定し、農薬はニッカリンTではなかった可能性があるとした再審決定を否定した。

 さらに自白の信用性について、奥西死刑囚が警察の取り調べで自白した後の記者会見でも自ら犯行を認める発言をしたことなどから「自白は信用でき、物的証拠や客観的事実とよく符合している」と判断。「状況証拠によって奥西死刑囚が犯行を行ったと十分に認定でき、再審を開始する理由は認められない」と結論付けた。

 奥西死刑囚は64年12月、津地裁で無罪判決を言い渡されたが、69年9月に名古屋高裁は死刑判決を宣告、72年6月に最高裁で死刑が確定した。

 同死刑囚はその後も無実を訴え続け、73年から毎年、自分1人で再審請求を繰り返したが、いずれも棄却。77年からは日本弁護士連合会が支援に乗り出したが、第5、6次の請求も退けられた。

 しかし、第7次請求審で同高裁刑事一部は2005年4月、「ぶどう酒にニッカリンTを混入したなどとする自白の信用性に重大な疑問がある」として再審開始と死刑執行の停止を決定。検察側が異議を申し立て、再審決定の妥当性があらためて審理されてきた。

 <異議審決定の骨子>

▼原決定を取り消し、再審請求を棄却する

▼奥西勝死刑囚以外に農薬混入の機会はない。死刑囚はニッカリンTを保管しており、ただ1人で公民館にいた間に犯行を行うことが可能だった

▼ぶどう酒に混入されたのがニッカリンTであっても、ニッカリンTに含まれる物質が検出されないこともあり、使用された農薬がニッカリンTでないとは言えない

▼再審決定は、証拠の王冠は事件のぶどう酒瓶のものではない可能性があるというが、事件の王冠に間違いない

▼再審決定は、公民館でぶどう酒が開栓される前に封紙を破らない偽装的な開栓が行われ、そこで毒物が混入された可能性があるとするが、証拠物の状況から、公民館での開栓だったことが認められる

▼奥西死刑囚の自白は当初から詳細、具体性に富み、信用性が高い

 <奥西勝死刑囚の話> 残念です。思っていたのとは反対の結果でした。再審開始の決定をしてくれたところで、大きな希望を持って待っていました。本当に残念でなりません。わたしは無実です。やってませんから、命の限り戦います。

 <名張事件弁護団の話> 本日の決定は、新証拠の持つ意味、影響力を矮小(わいしょう)化し、自白や状況証拠に含まれている重大な疑問点に目をつむっっている。「人権擁護の砦(とりで)」としての裁判所の役割を放棄したものとしか評価し得ない。

 <久保田明広・名古屋高検次席の話> 検察官の意見をいれた内容で、妥当な決定と理解している。


http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20061226/eve_____sya_____007.shtml