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2006年12月26日(火) 00時00分

06回顧 カルト集団「摂理」事件 朝日新聞

「心にスキがあった」。20代の男子大学生はそう振り返った。05年秋に書店で2人組から「バレーボールを一緒にやらないか」と声をかけられた。1カ月後には聖書の勉強を勧められた。週2回の礼拝、毎朝聴いた教義、勧誘活動……。

 「おかしいと考える間がなかった。今思うと、いかにマインドコントロールされていたのか」

 韓国生まれのカルト集団「摂理」が国内に伝わったのは約20年前とされる。関係者によると、キリスト教の聖書を独自に解釈する教義を掲げ、国内にも大学生を中心に信者約2千人。バレーボールや演劇などのサークル活動を装って勧誘するのが特徴だ。県内の信者は約300人で、国内「ナンバー2」の韓国人女性幹部(44)が千葉大や千葉工大に在籍しながら、関東での勧誘を取り仕切ってきたという。

 今夏に元信者が会見するなどして、鄭明析(チョン・ミョン・ソク)教祖(61)=強姦(ごうかん)容疑などで国際手配=が女性信者らに性的暴行を繰り返していた疑いが表面化。教祖は頻繁に来日し、主に千葉市内にあった女性幹部宅でわいせつ行為をしていたとされる。

 信者の脱会を支援する渡辺博弁護士らが8月、女性幹部らを出入国管理法違反などの疑いで告発した。しかし教祖や女性幹部はすでに国外に出た。教祖による性的被害についても、「追及したいが、告訴に踏み切る被害者が見つからない」(渡辺弁護士)という。

 千葉市中心街にある一戸建ての女性幹部宅を最近、再び訪ねてみた。近所の人によると、一時は人影が消えていたが、再び人の出入りがあるという。渡辺弁護士は「信者数は減っておらず、今も堂々と活動を続けている」と指摘。勧誘のためのクリスマス会も各地で催された。

 千葉大は11月からカルト問題専用の相談窓口を設けている。専用電話やメールで専門家が相談に乗る。すでに数件の相談が来た。さらにポスターで注意を呼びかけ、カルト被害への対処法を考える講演会も開いた。同大学担当者は「勧誘しにくい環境づくりが重要」と話す。

 ただ、各地の大学も同様の対策に乗りだしたためか、東京都内の女子高文化祭で、集団による勧誘活動が確認された。「若い方が素直」として対象を高校生にも広げた可能性があるという。

 何人かの元信者に直接取材した。サークル活動で濃密な人間関係を築くと、勧められた活動を断れずのめり込んでしまう。共通するのは、まじめで素直な若者ということだ。オウム真理教の場合も同様だった。

 元信者の女性は言う。「信者の脱会を支援したいし、声を出すことで新たな被害を防ぎたい」。社会全体でカルト集団を許さない姿勢を持ち続けることが重要だ。

http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000000612260001