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2006年12月14日(木) 02時06分

12月14日付・読売社説(2)読売新聞

 [医療事故調査委]「信頼できる制度へ課題もある」

 医療への信頼を取り戻すために、重要な取り組みだろう。

 厚生労働省が昨年9月から、モデル事業としてスタートさせた医療版の事故調査委員会である。事務局となった日本内科学会が実施状況をまとめた。

 調査委は病理解剖学などの医療関係者と法律家で構成し、診療中の不審死(医療関連死)の原因を調査する。1年余りの間に計36件の医療事故について検証に着手し、7件の報告書を公表した。

 このうち1件は、手術した医師の技術が未熟だったことが患者死亡の原因とし、当初は「問題なし」としていた病院側の調査結果をくつがえした。

 診療ミスとは認定しなかった他の報告書も、「患者急変時の連絡体制を整備すべきだ」「患者・家族にもっと丁寧な説明が必要だった」など、病院に対して厳しく改善点を指摘している。第三者機関として中立的と受け止めうる内容だ。

 モデル事業は、東京都、大阪府、愛知県など、6都府県と札幌市で行われている。だが、現状はまだ件数が少なく、正式な制度へと発展できるかどうかは未知数だ。実施地域を広げ、検証事例をもっと積み上げる必要があろう。

 医師が最善を尽くしても患者が命を落とすことはある。一方で、病院や医師のミスが原因で患者を死なせるケースもある。しかし、遺族が両者を見分けることは難しい。

 現在、中立的な調査制度がないため、病院側の説明に納得できなければ、遺族は民事訴訟を起こすか、警察に告訴するしかない。これでは、医師と患者の相互不信は募るばかりだ。

 医療に関係する訴訟は、2005年は999件に上り、10年前の2倍以上に増えた。こうした状況は、医師不足の一因ともなっている。訴訟リスクを恐れて分娩(ぶんべん)を手がける産婦人科医が減少していることは、その一例だ。

 調査委の調べで病院の責任の有無が分かれば、遺族は納得しやすい。裁判より速やかに、補償などの話し合いを進めることもできる。病院側も遺族とのトラブルを長引かせずに済み、再発防止の体制作りに迅速に取り組めるだろう。

 ただし正式な制度として確立するためには、課題も多い。

 仮に訴訟と同じ年間1000件が調査委に持ち込まれるとすれば、相当に多くの人材と費用がいる。中立性と権威のある人選も重要だ。

 調査報告書にどのような法的効力を持たせるか、刑事責任を追及する捜査当局との関係をどうするか、といった点も慎重な検討が必要になろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061213ig91.htm