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2006年12月14日(木) 02時07分

12月14日付・読売社説(1)読売新聞

 [ウィニー判決]「技術者のモラルが裁かれた」

 技術者のモラルを重く見た判断と言えるだろう。

 ファイル交換ソフト「ウィニー」を開発した元東京大大学院助手に対し、京都地裁が罰金150万円(求刑・懲役1年)の有罪判決を言い渡した。

 ウィニーは、インターネットにつながったパソコン同士でデータを簡単にやり取りできるようにする。通常のデータ交換なら問題ないが、専ら違法コピーした映画や音楽の交換に悪用されている。

 元助手は、ウィニーの開発で、こうした著作権の侵害を助長したとして、著作権法違反ほう助罪に問われていた。

 技術には必ず「明と暗」がある。包丁を例に取ると、料理の道具なら「明」だが、凶器に使われれば「暗」になる。

 判決はウィニーの「暗」の面を問い、使い方次第で社会に害をもたらすことを元助手は十分に理解していた、と認定した。にもかかわらず、開発と改良を続けネット上で不特定多数に無償提供し、著作権侵害を引き起こしたと断じた。

 技術開発に当たって技術者は「暗」の側面を自覚する必要がある、というメッセージだろう。ウィニーに限らない。科学技術の研究開発に携わる者にとって共通に求められるモラルだ。

 ウィニーは、交換するデータを、複数のパソコンがリレーしながら運ぶ。最初にデータを発信したパソコンは分からない。この匿名性が著作権侵害を後押ししたとされる。悪用される危険性を伴うソフトであることは否定できない。

 しかも、ウィニーを標的にしたウイルスソフトを何者かが開発した。感染すると、パソコン内のデータを勝手に流出させる。全国で流出事件が多発し、今も被害が後を絶たない。依然として40万人以上とされるウィニーの利用者は、危険性を自覚すべきだ。

 元助手は、ウィニー開発について、摘発される以前から、ネット上で音楽や映像がやり取りされる時代のビジネスモデルを模索する意義を強調していた。

 一昨年の春、元助手が京都府警に逮捕されて以来の動きは急だ。ネットを使った音楽配信は日常的になり、映像配信も急速に広がっている。ウィニーと似たソフトを使ったビジネスも出現した。

 判決も認めている通り、有用な技術だからだ。一部のコンピューターにデータを蓄積して提供する必要がなく、通信量の分散に役立つ。新ビジネスはファイルを違法コピーされない仕組みも加え、利便性と著作権保護を両立させている。

 今回の判決で技術者が委縮するという指摘もある。だが、同種ソフトの開発は止まっていない。心配は無用だろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061213ig90.htm