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2006年12月12日(火) 01時58分

12月12日付・読売社説(2)読売新聞

 [住基ネット]「『離脱の自由』を退けた妥当な判決」

 住民基本台帳ネットワークの安全性を認め、一部住民のネット離脱の要求を「理由がない」と退けた。妥当な判決だ。

 「個人情報の保護対策が、制度、技術、運用面で種々講じられており、プライバシーが侵害されるような具体的危険はない」。2審の名古屋高裁金沢支部の認定である。

 行政機関が集めた個人情報が、職員らによって不正に収集、利用され、「住民が丸裸にされる」とまで述べて離脱を認めた1審・金沢地裁と正反対だ。

 原告住民側はこう主張していた。住基ネットに参加させられ、個人情報の提供の可否などを自ら決められる「自己情報コントロール権」としてのプライバシー権が侵害された。今後も情報が不正に利用されるなどの危険性が高い——。

 確かに氏名、生年月日、性別、住所といった本人確認情報は、憲法上守られるべきプライバシー権である。だが、公権力がこれらを正当に収集、管理、利用する限りにおいては「公共の福祉」による権利制限として許される。2審判決はそう述べて住基ネットを合憲とした。

 「全員参加」が制度の大前提だ。すべての住民の本人確認情報がもれなく提供され、適正利用されることによって様々な公共的利益を生む。年金受給者の「現況届」の省略化などは好例だ。

 その点を、2審判決は「一部でも不参加を許せば、ネット本来の機能が果たせなくなる」「従来のシステムや事務処理を残さざるをえず、重大な支障をもたらす」と明確に指摘している。

 最近の大阪府箕面市のケースが、具体例として当てはまるだろう。住基ネットを違憲とした先月末の大阪高裁判決に従って、市は原告住民1人のネットからの離脱を認める方針だ。

 しかし、そのためには最大3500万円の経費が必要になるという。市民の中からは、そうした出費は納得できない、という声も出て来るのではないか。

 今回の訴訟で原告住民側は、北海道斜里町でファイル交換ソフトを通じて一部住基ネット関連情報が漏れたケースなどを挙げ、危険な制度だ、と主張した。だが判決は、それらは管理の末端での「ごく例外的な事例」であり、制度的欠陥を示すものではない、と退けた。

 2002年の運用開始以来、各地で起こされた住基ネット訴訟では、今回の2審同様、住民側敗訴の判決が相次いでいる。個人の離脱を認めたのは、金沢地裁と大阪高裁の2判決だけだ。

 制度の利便性、有用性を認め、「個人離脱の自由」に「公共の福祉」を優先させる司法の流れが定着するだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061211ig91.htm