悪のニュース記事

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2006年12月05日(火) 01時43分

12月5日付・編集手帳読売新聞

 昔から「狸(たぬき)は入道、狐(きつね)は女」という。変身して人を化かすのにもそれぞれ得意種目があり、狸は好んで僧体を、狐は女性を装うという意味である◆マンネリでは芸がないと思ったか、ひところは金融機関になりすまし、不良債権隠しや簿外債務隠しの技を競った。化けの皮が剥(は)がれたのは北海道拓殖銀行や山一証券が破綻(はたん)した1997年11月である◆目端の利く狐狸(こり)は次なる変身種目、通信サービス業に芸域を広げたらしい。インターネットを利用した電話会社「近未来通信」は拓銀や山一の倒れた翌月に設立されている◆近未来通信のホームページにはいまも「総務省届出済 電気通信事業者」と麗々しくうたわれている。その内実は電話会社にほど遠く、投資家から集めた資金を別の投資家の配当に回すネズミ講まがいの自転車操業であったという◆本紙が不明朗な経営実態を報じるまで総務省は調査もしていなかった。箸(はし)の上げ下ろしにまで口を出した旧大蔵省の金融行政という「羮(あつもの)」に懲りて「膾(なます)」を吹いた末の放任行政であったとすれば、被害の広がりは金融危機の予期せぬ落とし子と言えなくもない◆警視庁が詐欺の疑いで強制捜査に入った。昔の狐狸は木の葉をお金と錯覚させたが、当節の狐狸は人さまの資産を木の葉に変える。剥がされる化けの皮もさぞかし厚かろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061204ig15.htm