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2006年12月05日(火) 07時51分

近未来通信、事業不相応の資金収集朝日新聞

 IP電話事業者「近未来通信」(東京都中央区)をめぐる投資詐欺事件で、同社が事業規模から大きくかけ離れた投資金を集め、自ら掲げた事業モデルから逸脱した会社運営をしていたことがわかった。通信事業に詳しい専門家からは「初めから詐欺狙いの可能性が高い」との指摘もある。警視庁は5日も家宅捜索を続け、資料を押収して実態の解明を進める。

 「ユーザーの開拓に比例してサーバーの回線数を増やす必要がある」。近未来通信の石井優社長は、詐欺容疑が持たれている同社の投資案件「中継局オーナーシステム」に関するPR文で、多くの投資家を集める必要性をこう説明していた。

 だが、通信事業に詳しい関係者は、このうたい文句と同社の実態はあまりにかけ離れていると指摘する。

 同社が「中継局」と表現するサーバーは、ユーザーが電話を掛けるたびに認証作業や通話先への接続作業を行い、通話時間などを管理する。IP電話の根幹ともいえる装置で、同社は問題発覚後の先月末、総務省に対して、投資金を元に国内外に2466台を設置しているとの報告書を提出した。

 だが、多摩大学の井上伸雄教授(通信工学)は、同じ報告書にある年間の通信料売り上げ約3億円という数字から、「この売上高から推定されるユーザー数に対応するにはせいぜい1、2台のサーバーがあれば十分。2466台も設置する必要はまったくない」と、膨らんだ投資額にユーザー数の増加が対応していない実態を指摘。実際に何台のサーバーが設置されているのかは不明で、同省の立ち入り検査で判明した稼働数はわずか7台だった。

 中央大学の直江重彦教授(情報通信産業政策)は「サーバー1台の設置に1000万円というのも、通話料から毎月数十万円の配当というのも現実的にあり得ない数字」という。ある専門家は「同社が掲げるビジネスモデルを見る限り、初めから詐欺的に投資金を集めるためIP電話事業をダシに使ったとしか思えない」と話す。

 専門家の目には「荒唐無稽(こうとうむけい)な詐欺商法」と映る投資話も、投資家の目には違って映った。

 「IP電話市場は飛躍的に発展が見込めます」。4月に東京であった説明会で、会社紹介ビデオに登場した石井社長は、自信に満ちあふれた表情だった。

 約20人の参加者を前に同社社員らは、IP電話市場の成長をグラフで示し、会社の将来性を強引に重ね合わせた。同社のIP電話システムを使って実際に米国に電話をかけてみせ、国際通話が可能なことをアピール。IP電話という一般にはなじみの薄い分野に、知られざる投資話が眠っているかのように、投資家を誘導していった。

 日置茂専務は「全国に商品の販売代理店が500社以上あり、顧客は増えている。中継局オーナーのみなさんは、我々に営業を任せるだけでいい」と断言。1口最低でも1100万円が必要な投資額にも「2、3年で元が取れる」と太鼓判を押した。説明会後は本社に移動し、実際に稼働しているという中継局を見学させた。

 投資家の一人は「説明会ではIP電話事業が魅力的に見えた。いま思うと、金を集めるだけが目的だったんだろう」と悔しがる。

http://www.asahi.com/national/update/1204/TKY200612040448.html