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2006年12月05日(火) 01時45分

12月5日付・読売社説(2)読売新聞

 [近未来通信]「IP電話事業は虚業だったのか」

 「新通信時代のビジネス」は単なる虚構にすぎなかったのだろうか。

 IP電話事業を掲げる東京の近未来通信に対し、警視庁の強制捜査が入った。IP電話の中継局のオーナーになれば高配当が得られると虚偽の説明をし、多額の資金を集めたとする詐欺容疑である。

 同社は電気通信事業の規制緩和の波に乗る形で9年前に設立された。社長は健康器具や浄水器の販売業からの転身だった。これまでに約2000人から少なくとも300億円を集めていた。設立後の経営や商法の実態、資金の流れなど、まだ不明な部分が多い。

 中継局のオーナーになるには1口1100万円以上を支払う。IP電話の利用者が支払う通信料から「月60万円から80万円の配当がある」「3年で投資を回収できる」という触れ込みだった。

 監督官庁の総務省も先月末、立ち入り検査に入っていた。その結果からも、当たり前の経営の跡がうかがえない。

 投資家が購入した中継局の計2466台の通信用サーバーのうち、稼働しているのは7台だけだった。米国など海外12か国にあると説明していた中継局のサーバーは1台も稼働していなかった。

 サーバーを設置する際、インターネット網と電話回線を接続するためのソフトウエアを組み込まなくていい、と業者に指示することも多かったという。

 昨年7月期の売上高181億円のうち電話利用者の通信料は、わずか3億円にすぎなかった。そもそも、肝心のIP電話の利用者を増やす営業活動を、ほとんどしていなかった。

 これでは「通信料から配当」することは、できるわけがない。「詐欺商法」と被害者が憤るのも当然だろう。

 警視庁も、内実は投資家から集めた資金を別の投資家への配当に回す自転車操業だったとみている。設立直後から、新たな投資家を勧誘すれば高額の手数料を払う、というマルチ商法まがいのこともやっていた。

 総務省は、もっと早い段階で実態を把握する方法はなかったのか。不明朗な通信事業者が横行するようでは、業界全体の健全な発展にもかかわる。

 格安の固定電話サービスで注目されたベンチャー系通信の平成電電が昨年、経営破綻(はたん)するという問題もあった。「予定現金分配率10%」などと、やはり高配当をうたい、出資を募っていた。

 ネット利用の新商品が次々と登場するIT全盛の時代だ。投資家や利用者として、どうかかわっていくか。よく見極める姿勢も大事だろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061204ig91.htm