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2006年12月04日(月) 00時00分

銚子電鉄がけっぷち 負債約2億円 事業改善命令 事業改善命令が出された銚子電鉄。電車は生活に欠かせない足としている沿線住民も多い=銚子市西芝町の銚子駅で 中日新聞

 銚子電鉄(本社・銚子市新生町)が廃線の危機に直面している。前社長による業務上横領事件などで約二億円の負債を抱え、車両の点検費用の工面も厳しい状況。資金調達のためテコ入れした名物「ぬれ煎餅(せんべい)」の販売が軌道に乗ったのもつかの間、鉄道の安全確保を目的とした事業改善命令が国土交通省から出された。鉄道事業の許可取り消しもあり得る厳しい措置だ。経営再建には一刻の猶予もない。 (宮尾幹成)

 銚子電鉄線は銚子市内の銚子−外川間の六・四キロを約二十分で結ぶ。一時間に二−三本の間隔で運行している。二〇〇五年度の輸送人員は約六十五万四千人で、一日当たりでは約千八百人。年々、減少傾向にある。

 平日の夕方、銚子駅から外川駅まで乗ってみた。裏が白い厚手の切符を手にしたのは久しぶりだ。本銚子駅で地元・清水小学校(同市清水町)の名札を付けた大勢の子どもたちが乗り込んで、にわかに車内はにぎやかになった。

 同校によると、児童の三割にあたる約百三十人が通学に同線を利用。中には歩けば一時間かかる児童もいるという。バス路線はあるが、本数が少ない上、運賃も割高。宮内謙一教頭は「子どもたちに愛されている電車。なくなっては非常に困る」と存続を熱望する。

 同社の〇五年度の収支を見ると、本業の鉄道事業の収益は約一億千四百万円だが、費用を差し引くと約三千九百万円の赤字。「ぬれ煎餅」販売などの食品事業で約三千四百万円の黒字を計上するものの、トータルでは約五百万円の赤字だ。

 前社長が同社名義で借り入れた約一億一千万円を着服した事件も、経営に影を落とす。〇四年の事件発覚後、市の補助や金融機関の融資はストップした。国の「鉄道軌道近代化設備整備事業」を利用して、国や市に補助金を申請することも検討しているが、同社負担分(20%)の資金繰りがつかないことなどから宙に浮いた状態だ。

 先月二十四日、国交省関東運輸局から鉄道事業法に基づく事業改善命令が出された。保安監査で、線路の枕木の腐食や沈下などが確認されたためだ。二カ月以内に改善状況を報告し、補修工事に着手しなければ、事業の停止命令や許可取り消しの可能性もあるという。同社は、今週中に工事費用の見積もりを出す予定だ。

 「電車運行維持のために『ぬれ煎餅』を買ってください!!」

 先月十五日、同社のウェブサイトに小川文雄社長と従業員一同の連名で、ぬれ煎餅の購入を呼び掛ける声明が掲載された。とたんに全国から注文が殺到。二週間後の二十九日には注文が一万件を突破し、オンラインでの受け付けを中止した。「全く想定していなかった事態」(同社)とうれしい悲鳴を上げる。

 現在、製造工場をフル稼働し、担当以外の社員も勤務時間外に発送作業を手伝っている。注文分の現金が入れば、当面の法定点検などに必要な費用は捻出(ねんしゅつ)できそうだという。

 ぬれ煎餅を経営再建の起爆剤としたいところだが、同社は一過性のものとみて気を引き締める。「乗客を増やしたいというのが本心。副業に即効性があるのは確かだが、電車の安全性と利便性を高めるのが経営の本筋だろう」

 “ぬれ煎餅景気”で当面の危機は乗り切れたとしても、その先の道のりは決して平坦(へいたん)ではない。


http://www.chunichi.co.jp/00/cba/20061204/lcl_____cba_____000.shtml