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2006年11月27日(月) 00時00分

開廷〜判決23分間 即決裁判県内初朝日新聞

 比較的軽い罪で起訴された被告に初公判で判決を言い渡す「即決裁判」が27日、県内では初めて青森地裁(渡辺英敬裁判官)であった。開廷から判決までの時間はわずか23分。裁判の迅速化で被告の負担が軽減するメリットがある一方で、「裁判に効率主義を採り入れるのは危険」と安易な運用にくぎを刺す司法関係者もいる。

 この日の即決裁判の被告は、青森市内の地蔵堂でさい銭270円を盗んだとして窃盗の罪に問われた無職の男(35)。罪状認否で被告が起訴事実を認めると、裁判官が被告に「処分されてもやむをえないですね」と確認し、「即決裁判の手続きによって審理を行います」と宣言した。

 証拠調べの手続きは簡略化されたが、被告人質問や最終陳述は通常通り行われた。検察側は、被告が過去にも同様の犯行を80回以上繰り返していたとして懲役10月を求刑。5分の休廷をはさんで、裁判官は懲役10月執行猶予3年の有罪判決を言い渡し、「同じことを繰り返さない生活態度を身につけてほしい」と被告を諭した。

 被告の弁護を担当した菊池至弁護士は公判後、「速くてよかった。これで身柄を解放されるのだから、被告にとってのメリットも大きい」と話した。

 即決裁判は司法制度改革の目玉の一つ。09年5月までに始まる裁判員制度に、合理化で浮いた時間や人を回す狙いもある。

 だが、効率化を求める動きには疑問の声もある。日本司法支援センター青森地方事務所長で県弁護士会の会長も務めた金澤茂弁護士は「裁判本来の意味が失われかねない」と慎重な立場をとる。犯罪の背景を十分に説明できないばかりか、事件をつまびらかにすることで果たしてきた被告に対する再犯防止の役割が弱まる可能性があるという。

 金澤弁護士は「弁護士が妥協したり、冤罪を見逃したりする恐れもある。通常の裁判が短縮化に向かわないとも限らない」と危険性を指摘し、「裁判の中身を濃いものにする努力を怠ってはいけない」と訴えた。

 最高裁によると、全国で扱う刑事事件は年間約13万件で、即決裁判の対象になるとみられるのはその約1割。金澤弁護士は「青森県でも、年間100件以上になる可能性がある」と話している。

キーワード「即決裁判」
 刑事裁判の迅速化を目指して、10月2日から導入された。万引きや外国人の不法残留など比較的罪の軽い事件に適用され、1年以上の懲役や禁固にあたる重い罪の事件は対象外。裁判は起訴から14日以内に行われ、即日、判決が言い渡される。実刑判決はなく、懲役・禁固には必ず執行猶予がつく。捜査段階で被告が即決裁判に同意することが前提で、検察官が起訴時に裁判所に手続きを申し立てる。

http://mytown.asahi.com/aomori/news.php?k_id=02000000611270011