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2006年11月23日(木) 00時00分

放送とネット ジャーナリズムに危機感 東京新聞

 ニュースや情報を得る手段が多様化する現在、ジャーナリズムの分野で、放送とインターネットは媒体として、その役割を果たしているのか。テレビとネットそれぞれの世界で、“硬派路線”を歩む人たちによるパネルディスカッションがあった。新旧メディアの可能性や課題について活発な議論が繰り広げられ、特に「視聴率至上主義」などと批判も多いテレビには、一様に危機感を募らせ、奮起を強く求めた。 (藤浪繁雄)

 パネルディスカッションは、千葉市の幕張メッセで開催された「国際放送機器展」(15−17日、電子情報技術産業協会主催)の一環。「放送とインターネット〜ジャーナリズムの未来を担うものは誰か」と銘打ち、放送とネットで、報道やドキュメンタリーの経験豊かな人たちが登壇した。

 まず、ネットで映像ニュース専門局を運営する「日本ビデオニュース」の神保哲生社長が口火を切った。登録者の会費で運営するシステムが軌道に乗ったことを明かし、「広告費に依存した民放と異なり、外部の干渉を受けず、スポンサーや視聴率の問題もない。(民放)テレビは無理してイヤなこと(ジャーナリズム)をやらなくても結構」と挑発気味に話した。

 大胆な意見に、TBSの金平茂紀報道局長は「ネットは環境の変化をもたらしたが、ジャーナリズムの目指すべき方向は変わらない」ときっぱり。しかし、テレビの現状に憂慮も示し、「果たすべき役割を果たしていない。市民の利益や考え方と遊離している。在り方を問い直す必要がある」と自戒を込めた。TBSで社会派番組を手がけ、現在は番組プロダクション「現代センター」代表取締役の吉永春子氏は、「面白ければテレビでもネットでも構わない。現場に行って(ニュースの)確証をとってくる。それがジャーナリストの仕事」と強調した。

 ネットとテレビ、双方のメディアが抱える課題にも焦点を当てた。

 ネットについては、ブロードバンド普及、ネット関連企業の躍進もあり、「アクセス数」がニュース価値の尺度となっていることに、金平氏が「その考え方はビジネスのロジック(論理)。無思考、思考停止につながり、ジャーナリズムの質を低くする」と危機感を募らせた。また、殺到する書き込みなどに目立つ「匿名性」も重視。吉永氏は「ネット(の書き込み)は監視の力が強いが、品位や知性に欠け、まじめなジャーナリズムの足を引っ張ってしまう場合もある」と他メディアへの悪影響も懸念した。

 一方、テレビについては、ネット関連企業がキー局の買収を仕掛けた動きを受け、報道機関の使命から「公共性の担保」「市場の原理」が議論となった。神保氏は「上場を廃止し、本当に公共的なものに特化するか、それとも膨張路線で行くか」と二者択一で迫った。金平氏は市場性とは別の次元で、「公共的な部分は守らねば」と口にしたが、それより「今は(テレビ界が)病気。誰のためにこういう仕事をするのか立ち返るべきだ」と原点回帰の重要性を唱えた。

 ネット全盛の中、テレビ報道の“復権”を期待する声も出た。

 制作プロダクションの先駆け、テレビマンユニオン副会長の今野勉氏が「報道・ドキュメンタリー系の番組が不人気なのは、視聴者が必要を感じないから。置き去りのメディアという危機感が強い」と向けると、金平氏は「昭和二十八年生まれのテレビ放送は希望のメディアだったが、今は受け手(視聴者)との関係が変わり、お互い信じていない」と語った。吉永氏も「テレビはナメられている」と指摘し、一般市民は情報の発信や意見発表の機会を望んでいるのに、「テレビは一日中、同じような内容を繰り返して伝えるだけ」とニーズに応えていないことを批判。テレビの怠慢がネットの成長を促した一因でもあるようだ。

 「学生がテレビ業界に興味を示さない。ブランドとしては人気だが、マスメディアとしては不人気」と今野氏が嘆くと、神保氏は、日本メディアの構造的問題に立ち返り、「(既成メディアは)特権化し、ジャーナリズムの新規参入もできない。伝送路が多様化して実現したネットの可能性を摘むことをしてほしくない」と訴えた。

 未来への模索が続く中、吉永氏は「視聴率の呪縛(じゅばく)から解放され、新鮮な感性の人材がいれば素晴らしいテレビになる」と結んだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20061123/mng_____hog_____000.shtml