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2006年11月21日(火) 02時25分

11月21日付・読売社説(2)読売新聞

 [著作権延長]「作品の流通を損なわない工夫も」

 著作権の保護期間を欧米並みにしてほしい、と文芸家や音楽家の団体が求めている。

 現行の著作権法では、「著作者の死後50年」で保護期間が切れてしまう。これを、ほとんどの先進国が定める「死後70年」へと延長するべきだと要望している。

 最大の理由は、格差の解消だ。保護期間が欧米より20年短いということは、その分、日本の著作者の権利が損なわれていることになる、と訴えている。

 現状では、日本の小説や絵画は国内と同様、海外でも、日本の法律に合わせて死後50年までしか保護されない。これを過ぎるとタダで利用されてしまう。

 国際的にも、肩身が狭い。死後70年まで保護された国の著作物が、日本では20年早く、許可を得ずにタダで使えるようになるためだ。

 新訳による出版が相次いだサンテグジュペリの「星の王子さま」は、その好例だ。本国のフランスでは著作権が生きているが、日本では保護が切れたことが、出版を後押しした。

 得をしているように見えるが、海外から、日本は他国の知的財産にタダ乗りしている、と批判されかねない。

 保護延長は、日本が文化と、それを支える著作物、著作者を、どう育てる方針か、という問題でもある。著作権法を所管する文化庁は、延長が可能かどうか早急に検討を始める必要がある。

 日本は文化の輸入額が輸出額より多いから延長は損という声もある。だが、そう言われては、マンガのように国際的に評価の高い著作物は立つ瀬がない。

 延長は文化の発展を阻害する、とも指摘される。既存の作品を活用して新たな創作が生まれることも多い。実際、平原綾香さんがホルストの曲を基に「Jupiter」をヒットさせた例もある。

 著作物の円滑な流通が文化の発展に欠かせないことは、誰しも異論がないだろう。延長に際しては、流通を阻害しないよう、管理の仕組みを整備することが欠かせない。著作権管理の体制が整っている音楽業界は、参考になる。

 死後70年となると、著作物を利用しようにも著作者の遺族と連絡が取れず、結果的に作品が死蔵される、という懸念も出ている。著作権管理の仕組みがあればこうした損失は防げるはずだ。

 著作権法を巡っては、テレビ番組のネット配信やデジタル録音・録画制限など新たな課題が次々に浮上している。今国会にも、一部のネット放送を可能にする改正案が提出されている。

 著作権の保護・活用で世界に遅れないよう、論議を急ぎたい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061120ig91.htm