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2006年11月16日(木) 08時02分

教育基本法改正案、衆院特別委で可決 沖縄知事選のリスク覚悟 最後は政策優先産経新聞

 混迷の末、15日の衆院特別委員会で可決された教育基本法改正案をめぐり、与野党は19日投開票の沖縄県知事選もにらんでの激しい攻防を繰り広げた。与党側は、知事選への影響というリスクを覚悟で、教育再生を最重要政策に掲げる安倍晋三首相の強い意向に沿い「政策」を優先させた。久しく攻めあぐねてきた野党側は、審議拒否という徹底抗戦により与野党の対立構図を鮮明にすることで「政局」に持ち込んだ。

 「(採決の)機は熟した。それでいこう」。自民党の中川秀直幹事長と二階俊博国対委員長は14日夜、それぞれ安倍首相から電話で指示を受けた。与党内では一時、与野党の推薦候補が大接戦を演じている沖縄県知事選への影響を懸念し、衆院通過を21日に先送りする案も検討された。15日朝、中川氏と公明党の北側一雄幹事長ら与党幹部の会合では、知事選の情勢は「非情に厳しい。世論調査では与党候補がリードしているが、勢いは野党候補にある」との見方が出された。

 にもかかわらず与党が単独採決に踏み切ったのは、改正案を今国会の最重要法案と位置づける首相の意向を尊重した結果だった。

 政府・与党内には「いじめなどの問題があるときに教育基本法を変えなくていいのか。選挙と絡めるのはおかしい」(政府筋)との意見もあった。時間的に追い詰められていたことも事実だ。通常国会からの審議は通算100時間超。参院審議は、衆院の7〜8割の審議時間を割くことが慣例とされ、これ以上の衆院審議は、法案の今国会成立に黄色信号を点すことになる。

 二階氏は委員会採決後、「長く審議した後で多数決で物事を決することは民主主義のスタートだ。なんら瑕疵(かし)はない」と、採決の正当性を強調した。

 一方、民主党の小沢一郎代表は夜、都内のホテルで鳩山由紀夫幹事長と会談し、「野党の共同歩調をとれたのは大きい。与党の国対は間違えたんじゃないか」と強気の姿勢を崩さなかった。与党の単独採決を批判する民主党だが、幹部は14日夜、「採決強行は与党にとって得策ではない」と語っていた。沖縄県知事選の投開票を前に、国会が混乱すれば、政府・与党への批判が強まるとの読みだ。

 民主党は採決に反対した理由として「審議が尽くされていない」(高木義明国対委員長)と説明。具体的には(1)いじめによる子供の自殺問題(2)教育課程の未履修問題(3)政府主催のタウンミーティングでの「やらせ質問」問題−が未解決だと主張している。

 野党側は15日、思わぬ「攻撃材料」も手に入れた。自民党の山本拓農水副大臣が午前、国民新党の糸川正晃氏に対し、法案の採決に協力する見返りに、自民党への入党を持ちかけた−との疑惑が浮上したのだ。山本氏は疑惑を否定しているが、鳩山氏は「信じられない不当介入、議席買収だ」として、山本氏の罷免を求める考えを示した。

 こうした徹底抗戦の姿勢の背景には、党内外の複雑な事情もある。民主党は政府案の対案として、「日本を愛する心」などの表現を盛り込んだ「日本国教育基本法案」を提出。保守色の強いこの法案には、共産、社民両党はもちろん、民主党内にも「特に参院では、本音では反対の議員も多い」(保守系議員)とされる。

 公明党幹部は、野党の採決欠席の背景をこう指摘した。

 「ここで民主党案の採決も同時に行われた場合、共産、社民両党と民主党とで賛否が分かれる。沖縄県知事選への影響を考えたのだろう」

                    ◇

≪教委・宗教・教育行政… 与野党で認識共有も≫

 教育基本法改正案の審議は55時間を超え、さきの通常国会での審議を合わせると計100時間を上回る。質疑では、教育への国の関与や宗教教育のあり方などをめぐる掘り下げた論戦がみられ、与野党が認識を共有する場面も少なくなかった。

 特別委は当初、改正案そのものよりも、高校の必修科目未履修問題や、いじめによる自殺に対する文科省や教育現場の対応に、質疑が集中した。

 この質疑を通し、学校の管理・運営に責任をもつ教育委員会が機能していないことが浮き彫りになった。伊吹文明文部科学相は「文科相が示した指導要領に従って教育現場が実施するという担保が必要ではないか」と指摘。地方分権一括法の成立に伴い失った教育長人事の認可権や教委への指導・監督権を、再び文科相に戻す必要性を提起した。

 宗教教育のあり方も論戦の焦点となった。与野党の保守系議員が盛り込みを求めていた「宗教的情操の涵養(かんよう)」は、政府案では削除されているが、伊吹文科相は「宗教的情操の涵養は一般論として必要だ」と明言。さまざまな宗教の教義や歴史的役割を学校で学ぶことについても「国際人として必要だ」と述べた。

 教育行政のあり方をめぐっては、政府案の「教育は、不当な支配に服することなく」との条文の解釈について、「法律に基づいて行われる教育行政は『不当な支配』に属さず正当なものだとはっきりさせている」と述べた。

 現行基本法の「不当な支配」の文言は、日教組などが教委の指導・監督を拒否する根拠に使ってきた。伊吹文科相は改正案ではこの点が改善されたとして、「各教委が徹底しなければならないのは、特定の組合に属している教職員たちに、このことをはっきりと分かってもらうことだ」と強調した。

 また、国旗・国歌の扱いでは「学習指導要領は法律の一部であり、これに従うのは当然のことだ」として、教職員が入学式や卒業式で国旗や国歌を尊重するのは職務上の義務だと指摘。民主党の藤村修氏も「公立学校の教職員は法律や告示に従い、義務を果たすことが求められている」と同調した。(佐々木美恵)
(産経新聞) - 11月16日8時2分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061116-00000003-san-pol