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2006年11月11日(土) 01時42分

11月11日付・読売社説(2)読売新聞

 [NHK国際放送]「『命令』までは必要なかった」

 「命令」という形式に、こだわる必要はなかったのではないか。片山虎之助・参院幹事長が「おどろおどろしい」と漏らしたように、自民党内にも異論が出ていた。

 菅義偉総務相が、NHK短波ラジオの国際放送で、拉致問題を重点的に扱うよう命令を出した。

 「放送命令」は、放送法に基づく措置だ。NHKの国際放送での放送事項について、総務相が「行うべきことを命じることができる」と定めている。その費用は国が負担することになっている。

 これまでも、「国の重要な政策」「国際問題に関する政府の見解」などを重点的に扱うよう放送命令が出されてきた。いずれも抽象的な表現にとどまっているのは、NHKの自主性を尊重してのことだ。これを受け、NHKも独自の編集のもと、命令放送を実施してきた。

 今回は「拉致問題」と、具体的な項目を命令したのが特徴だ。

 確かに、北朝鮮の拉致被害者たちを励まし、国際的な理解を深めて拉致問題の解決を図ることは最重要事項だ。そのために、NHKの国際放送が果たす役割は極めて大きい。

 NHKは、「公共放送の当然の責務と受け止め、自主的に、きめ細かく報道してきている」との立場を繰り返し説明してきた。実際、今年1月から9月まで、国際放送で流れた約2000本の北朝鮮関連のニュースのうち、約700本は拉致関連だった。

 それでもまだ不足している、と判断したとしても、「命令」ではなく、もっと穏当な方法があったのではないか。放送法には「放送番組編集の自由」もうたわれている。「命令」の形にこだわったことで、番組内容への政治介入の恐れが指摘される事態を招いてしまった。

 「内容に踏み込むつもりはない」。菅総務相は命令の後、そう述べた。放送命令が民放にまで拡大するのではないか、という指摘にも、「あり得ない」と言明した。「報道・放送の自由」を損なうような政治介入は許されない。

 命令を受けて、NHKの橋本元一会長が、「これまで通り放送の自由、番組編集権の基本を貫いて放送していく」と語ったのも、当然のことだ。

 今後、放送命令のあり方について、論議することも必要だろう。

 NHKの受信料不払い問題を契機に、現在、総務省内で放送法の見直し作業が進められている。支払い義務の明記や、延滞金制度などが検討されている。

 放送命令についても、今回のような混乱を招かぬよう、見直すべきだ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061110ig91.htm