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2006年11月09日(木) 12時01分

日米のネット CM 事情japan.internet.com

本コラムでは、数百万人のケータイユーザーと公私ともに接し持ち続けてきた私の立場から見たケータイメディアの本質と、ケータイを中心にしたあたらしいマーケティングの考え方について、今回から数回にわたって考察していきたいと思います。

「Web2.0」が騒がれ始めて、かなりの時間が経ちました。まだ現在進行形でたくさんの議論が行われていますが、すぐに終わると一部で言われていたにもかかわらず、いまだに議論が続いています。これほど長い間議論が成立している理由は、Web2.0がひとつの思想を含んでいるからだと思います。Web2.0は、メディアとマーケティングに対して、以下の重要な前提条件を訴えかけています。

「すべては消費者が決めるのだ」

正直、マーケターとしては、自らの存在意義をも揺さぶられるようなテーマです。この前提条件に正面から向き合ってみると、「なぜマーケティングが存在するのか」という根本的な問いを発してみたくもなります。

従来、メディアやマーケティングは、消費者がいまより賢くなく、いまより受動的だということを前提としていました。『テレビ CM 崩壊』という本が売れていますが、ここで特徴的なのは、「マーケターではなく賢くなった消費者がすべてを決める」という、「広告の前提条件」が変化しているという事実が語られているということです。これはメディアや広告業界にとって非常に大きな前提の変化ですから、なぜ「すべては消費者が決める」という大潮流が起こっているのか、その対策をどうしたらいいのかについて、ケータイメディアの立場からの提言ができればと思います。

さて、私にとって「消費者」とは、ケータイユーザーのことです。9,000万台以上まで普及したケータイ。7,000億円を越えたともいわれるケータイコンテンツ市場。そして、今年の5月、ケータイ電話でのインターネット利用がはじめてPCを 上回り ました。(総務省調査)

ですから、「なぜ消費者はケータイネットを使うのか」という根本的な問いに対する答えを、見つけなければなりません。結論から申し上げると、「ネットメディアの進化は、ケータイから始まる」と断言してよいと思います。それは、ケータイユーザーの生の動向をつかみ、ネットの未来を見据えれば、おのずと見えてくるのです。

■日米のネット CM 事情
ネットメディアの進化といえば最近流行の兆しを見せ始めた映像配信についてお話したいところですが、そのために、まず PC での映像配信の状況をみてみたいと思います。これから立ち上がるケータイ映像配信市場を考える上でも、重要な示唆が含まれているからです。

・日本のインターネット映像配信&映像広告事情
2005年4月のサービス開始後1年足らずの間に、800万を超える登録者を集めた「GyaO」をはじめ、Yahoo!、MSN などの各ポータルの映像配信サービスは、利用者数については昨年から全般的に伸びています。

その理由としては、各社が従来の動画を有料で見てもらうという視聴料収入型の事業モデルから、広告収入型の無料視聴モデルに転換したことがあげられます。各社では、動画配信を今後の主力事業の一つとして位置づけています。

一方で、いわゆる「インターネット CM」の市場規模は、2005年度の約1億円から、2006年度に約5億円まで伸張。ただし、2006年度のネット広告全体2,808億円から見ると、0.18%程度に止まっています(インターネット広告推進協議会、電通)。同協議会は、2007年度の市場規模を前年比6倍増の30億円と予測していますが、これも広告全体の予測市場3,650億円の1%にも満たない数字です。昨年来、「放送と通信の融合」を軸に、大型の映像配信サイトやワンセグなどのサービスが登場しましたが、49億300万円大幅赤字を計上した GyaO の例を待たず、いまだに「コストセンター」としての位置づけが強いようです。

・米国のインターネット映像配信事情
一方、米ネットユーザーの54%は、オンラインで動画クリップや映画などをダウンロードしたり、閲覧したりしています(AP、AOL)。AP と AOL が今夏に実施した共同調査によれば、米国のオンライン動画閲覧者の32%は、1年前よりもネットで動画を閲覧する回数が増えています。また、オンライン動画利用者の71%は、「無料閲覧できるなら、その前に流れる広告を見るのは OK」と回答。アメリカでは動画閲覧が既に一般的な行動になっていることが伺えます。

動画人気は、一般消費者による動画(映像作品)投稿サイト「YouTube」の登場をきっかけに加速しました。ホームビデオや、アマチュア映像作家が作成した作品を投稿、閲覧、共有できる同サイトは、昨年12月に正式公開されて以来、ネットを中心に口コミで視聴者が増え、同社によると、投稿される作品数は1日あたり6万5,000本、閲覧される作品数は同じく1億件を超えるといい、数ある動画投稿サイトの中でもその人気は群を抜いており、市場シェアは約43%に達しています。

・米国のインターネット映像広告事情
では一方、動画広告はどうでしょうか。2006年上半期の米インターネット広告売上高約79億ドルのうち、ビデオなどのリッチメディア広告は7%(Interactive Advertising Bureau)。調査会社eマーケター(eMarketer)によると、オンライン動画広告の市場規模は、2005年の2億2,500万ドルから2010年は24億ドルに拡大する見込み。オンライン広告市場全体に占める割合は、同じ期間に1.8%から8.0%に上昇するとの予測です。また、米国では2005年度中に24%の広告主が映像広告を利用したとのデータもあります。これは2004年の実績の実に3倍。また、MSN のトッドハーマンによれば、米国で出稿金額上位100クライアントのうち、60社が映像広告を利用しています。

一方、グーグルは5月24日、同社の広告プログラム「アドワーズ広告」において、動画広告を開始すると発表。他社の動画広告と異なり、ユーザーが動画をクリックすることで映像が再生されるようになりました。また、YouTube は8月末、「ブランドチャンネル(Brand Channels)」と「参加型動画広告(Participatory Video Ad)」の2つの広告プログラムを発表。前者は広告主が「チャンネル」を開設し、YouTube 視聴者向けに動画広告などを配信できるようにするもので、ワーナー・ブラザーズ・レコードなどメジャー・クライアントが次々と出稿しています。また動画コンテンツ提供では YouTube に出遅れた Google、Yahoo!、AOL、マイクロソフトなどのインターネット関連大手も、メディア大手などと提携し動画広告の提供に力を入れています。

・米国での関心はインターネット映像広告の活かし方に向かっている
これらの映像広告に関する米国でのおもな関心は、日本で議論されているような「映像広告が有効か否か」ではなく、「このフォーマット上で何をし得るか」にあります。映像広告の有効性は多くのデータにより実証されています。例を挙げると、

—映像広告を見たユーザの70%が、リンク先にあるクライアントのコンテンツを閲覧していることから、従来のオンライン広告に比べてインパクトがより大きい(出典:Klipmart’s Research Division)
—テレビとネットで同じ映像広告を流した場合、ブランド認知力と購買意欲促進の点でネットが上回った(出典:Klipmart’s Research Division)
—映像広告を日常的に視聴しているユーザは、そうでないユーザに比べてオンライン上でより多くのお金を消費している(522ドルに対して720ドル)(出典:ARBITORON)

・動画 CM について、日本は情報鎖国気味?
現在は米国からの映像広告に関する具体的・客観的な情報については、日本のオールドメディアで話題になることが少ないという印象です。やや情報鎖国気味な状況といっていいでしょう。しかし今後、ネットメディアを中心に、動画 CM の情報が入ってくるにつれて徐々に日本でも映像広告がもてはやされるようになるのではないかと思います。

以上、日米のネット CM 事情についてご紹介しましたが、次回はケータイでの映像配信とモバイル CM の動向についてご紹介したいと思います。



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(japan.internet.com) - 11月9日12時1分更新

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