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2006年11月05日(日) 03時05分

<疾患腎移植>弟が兄に臓器提供…医療の枠外、波紋広がる毎日新聞

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で判明した疾患腎移植問題。11件の移植手術のうち3件の臓器を提供していたのは、移植医の万波(まんなみ)誠医師(66)の弟、万波廉介(れんすけ)医師(60)だった。ざっくばらんな性格で、「移植の腕は日本一」とも言われる兄の誠医師。廉介医師は先月末で勤務先の病院を辞め、非常勤で頼まれた時に手術に出向いているといい、「じゃあ、困っている人はどうすればいいんだ」とつぶやく。しかし、専門家らは「ルールを無視した行為だ」と一斉に批判の声をあげており、日本の移植医療の枠外で行われていた兄弟の行為に波紋が広がっている。
 ■兄は米で修業
 父親は岡山県内の開業医だった。誠医師は長男で、山口大医学部を出て70年に市立宇和島病院に勤務。廉介医師によると、30歳代のころ手術が思うようにできずに悩み、米国のウィスコンシン大の移植医に手紙を書いて渡米して、“弟子入り”した。
 帰国して市立宇和島病院に戻り、熱心に移植手術に取り組み始める。最初の移植手術は77年12月。当時は大学病院などでしか行っておらず、地元では「変わった医師」とも見られたという。
 しかし、免疫抑制剤が十分でなかった時代から手術の成功率が高く、評判に。県内外から指導を仰ぎに医師が訪れるようになった。「出血が少なく、素早い」「1日で二つも移植手術をこなしたと聞いた」。技術を神業的とたたえる医療関係者は多い。松山市内で働く元同僚の医師は、「腎移植を含む泌尿器科の手術全体で、日本一と思う。免疫抑制のやり方も評価されている」と話す。
 病院内では常にネクタイを締めず、サンダル履き。患者には丁寧に接し、評判は良い。その一方で、性格は「せっかち」という人もいる。「金に執着がない」というのが共通した評価。今年10月、担当した移植手術で臓器売買事件が発覚した際も、誠医師を知る人は全員が関与を真っ向から否定した。
 ■兄を尊敬し協力
 「兄の熱意や技術に、自分は到底及ばない」。廉介医師は誠医師を尊敬し、長年協力してきた。一方で、誠医師には1000回以上、手術に立ち会ってもらったという。
 廉介医師は誠医師同様に金銭に執着がなく、「手術の腕前はかなりのもの」という。高校の時、腹膜炎を起こして危ない状況になった。父親が大学病院に連れていき一命を取りとめた。廉介医師は「医療に助けられたのだから、医師になれ」という父の言葉で医療の道に進んだといい、「兄も父の助言で医師を選んだのではないか」と話す。
 今回の移植手術では、岡山県内で3件の摘出手術を担当。宇和島徳洲会病院の医師と一緒に、自らの車で臓器を運んだ。「移植に使えるのに、取って捨てるのはどうか。こっそり使っているわけではない」と、誠医師と同じように正当性を主張。「生体腎、死体腎とは別の、第3の(移植に使う)腎臓と思っている」と正面を向いて話した。
 先月末で岡山県内の仕事をすべて辞め、離島で医療を続けるつもりだったが、今回の問題で思うようにならなくなった、と話す。「臓器売買事件が発覚した当初、兄と『事件で移植がやりにくい法律ができて、日本の医療がもっと難しくなったら患者に申し訳ない』と話した」と打ち明けた。
 ■「非親族」うわさに
 一方で、廉介医師は90年11月、脳死移植について「臨時脳死及び臓器移植調査会」(脳死臨調)の結論を待たずに脳死状態の男性から腎臓を摘出し、物議を醸したことがあった。この時も、誠医師が移植を行っていた。
 今回も、愛媛県内のある医師は「新しいやり方をしているのは認めるが、学会などへの報告が少なく、優れた医療の共有という面で医学に対して責任あることをしない」と批判する。誠医師は会見などで否定していたが、「非親族の腎移植をしている」といううわさは以前からあった。「他の病院が移植を受け付けない時の『駆け込み寺』となっていたのではないか」(関西の医療関係者)という声も出ている。
(毎日新聞) - 11月5日3時5分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061105-00000007-mai-soci