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2006年11月05日(日) 00時00分

高金利に苦しむ多重債務者 東京新聞

 国会は週明け七日から、貸金業法案の審議に入る。貸出上限金利の引き下げと貸出額規制により、深刻な多重債務問題の解決に道を開くのが狙い。だが、消費者金融会社は高金利で貸し付けてきたツケが回り、大赤字に陥る事態に直面。今後「貸し渋り」を強めるのは避けられず、それによってヤミ金融業者の誘いに乗る債務者が激増するおそれもある。 (経済部・村上豊、生活部・白井康彦)

■状況一変

 貸金業法が成立すれば、消費者金融を取り巻く環境は一変する。

 ほとんどの消費者金融会社は現在、出資法の上限金利(年29・2%)と利息制限法の上限金利(15−20%)の間のグレーゾーン(灰色)金利で貸し付けている。約三年後にはグレーゾーン金利の融資が禁止され、消費者金融会社は貸出金利を大幅に下げざるを得ない。

 消費者金融の利用者は、利息支払額が減って多重債務に陥りにくくなる。安易な融資をしてきた業界も、襟を正すきっかけになりそうだ。

 法案のもう一つのポイントは貸出額規制だ。三年後には、債務者の年収の三分の一を超える貸出残高となる貸し付けは原則禁止される。

 例えば、年収三百六十万円の人が消費者金融のA社、B社、C社から借り、合計の借金残高が百二十万円であれば、D社はこの人に貸せない。

 多重債務者は、年収が四百万円未満の人が大半で、消費者金融など五−七社から借金し、合計の借金残高が二百数十万−四百万円ほどに膨らみ、返済困難になるというのが典型的なパターンとされる。

 ところが、今回の法案で多重債務問題が解決するとは限らない。債務者に五社目、六社目以降に借りてもらうケースが多い中堅消費者金融は、貸出額規制のあおりで貸せる機会が激減。業界関係者は「中堅以下の業者の大量淘汰(とうた)は必至」と口をそろえる。

 これを債務者からみると「六社目の借入先が廃業するため、追加借り入れを断念する」といった場面が今後、急増するのは間違いない。この人たちが借りずにすめばよいが、結果的に、ヤミ金融の誘いに乗ってしまうおそれがあるという。

■囲い込み

 消費者金融やカード会社は、高金利で貸し付けた過去の“しっぺ返し”にあえいでいる。灰色金利帯で貸し付けた利息分の返還請求の急増に伴い、巨額の損失計上を迫られたためだ。

 今年一月に最高裁が、灰色金利の貸し付けを制限する判決を下したのを受けた措置で、すでに九月中間決算を発表した武富士が千四百四十二億円の最終赤字に転落。残りの大手三社(アイフル、アコム、プロミス)も、二百億−三百億円の最終黒字見通しが、千五百億−二千八百億円の赤字に陥る見込み。

 金利引き下げは法成立から約三年後だが、すでにカード会社では前倒しで20%以下の金利帯で融資を行い、顧客を囲い込む動きが出ている。その結果、業界の再編が進むとともに、多重債務者への貸し渋りや貸しはがしが起きるのは必至。多重債務者がヤミ金融に走る可能性は強まっている。

■啓発活動

 政府は「多重債務者対策本部」を設置、対応策を練る一方、日本弁護士連合会も、ヤミ金融対策や多重債務者に対する相談窓口の拡充などに全力を挙げる方針。

 一方、多重債務者の中には、借金ができなくなることを恐れる「借金依存症」のような状態になる人もいて、ヤミ金融の餌食になりやすい。

 政府や自治体は多重債務者に対する啓発活動を行うとともに、心のケアや家計管理を含めたカウンセリングを行うなど地道な取り組みが求められている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20061105/mng_____kakushin000.shtml