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2006年11月05日(日) 17時23分

滝井元最高裁判事 空前の利益…高利で自殺者、疑問に毎日新聞

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インタビューに答える滝井繁男・元最高裁判事=丸山博写す    最高裁判事として貸金業者の高金利受領を厳しく制限する意見を述べ、10月末に定年退官した滝井繁男さん(70)が毎日新聞のインタビューに応じた。「消費者金融が空前の利益を上げる一方で、高利のために自殺者まで次々と出ているのは、どこかおかしいと考えていた」と当時の心境を初めて明かした。裁判官が、関与した判決に言及するのは珍しく「時代の状況をにらんで、法律をなるべくまともな方向に生かしていくのが法律家の役割」とも語った。【木戸哲】
 83年に成立した貸金業規制法は、業者が一定の書面を交付し、借り手が「任意」に支払った利息は、利息制限法の上限(15〜20%)を超えても有効とみなすと規定。上限を超えた利息を支払っても返還を求めることが出来るという判例を「骨抜き」にする立法だったとされる。
 業者はこの法律を根拠に高金利を受領していたが、滝井さんは「利息制限法があるのに、あくまでその例外に過ぎない貸金業規制法が幅を利かせているのはおかしい」と感じた。裁判長として04年2月、超過利息を受領するための書面の要件を厳しく解釈する判決を言い渡した。
 だが、業者が要件をクリアする書面を作れば、超過利息の支払いは有効となり「いたちごっこ」が続いてしまう。このため、滝井さんは貸金契約にある「分割弁済の支払いが遅れた場合は全額を一括弁済し、損害金も払わなければならない」との特約に注目。このような特約がある限り、任意の支払いとは認めないとする補足意見を述べた。「一括弁済を逃れようと借金を重ね、仕方なく高利を払う。これでは『任意』とは言えないと判断した」と振り返る。
 滝井さんも関与した今年1月の判決は、この意見を踏まえ「特約は超過利息の支払いを事実上強制している」と判断し、超過利息の受領を認めなかった。「天と地がひっくり返るほど画期的」と評価され、法改正の動きも加速した。
 業界側は低所得者への「貸し渋り」につながると主張し、金利引き下げに反対してきた。だが、滝井さんは「高金利でお金を借りたために、かえってその負担で状況が悪化し、自殺に追い込まれた人もいるはずだ。お金を借りられなくなって本当に困る人がどれだけいるのか」と指摘。「金利が入るからという理由で十分な審査もせずに融資し、生命保険にまで入れというのは正常な発想ではない」と、業界の姿勢にくぎを刺した。
 ◇流れ決めた1月の最高裁判決
 利息制限法は年利の上限を15〜20%と定めているが、貸金業規制法では(1)業者が一定の書面を交付(2)借り手が任意で支払う−−の条件で、出資法の上限(同29.2%)までの「グレーゾーン金利」を認めている。
 これについて、今年1月の最高裁判決は、業者のほとんどが設けている「返済が滞れば一括弁済する」という特約が「借り手に高利を事実上強制するもの」として(2)に当たらないと判断し、そのままでは超過利息の受領が不可能な事態になった。この判断は、滝井さんが別の裁判で示した補足意見そのままだった。
 判決後、消費者金融各社には、それまで利息制限法での上限を超えて支払った「過払い金」の返還を求める借り手が殺到。滝井さんが退官した翌日の10月31日、政府は、グレーゾーン金利を撤廃し、多重債務者救済につながる貸金業規制の関連法改正案を国会に提出した。
(毎日新聞) - 11月5日17時23分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061105-00000016-maip-soci