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2006年11月03日(金) 00時00分

NHK会長『放送命令』受け入れ意向 “苦渋の立場”浮き彫り 東京新聞

 NHKのラジオ国際放送で拉致問題を重点的に扱うよう菅義偉総務相が命令する方針を示したことに対し、二日の定例会見で事実上、命令に応じる意向を示した同局の橋本元一会長。ただ、命令に対する直接の発言は避けた格好。というのも「命令に応じる」などと明言すれば、政治に従ったというマイナスの印象を視聴者に持たれかねず、かといって「命令は編集権の侵害に当たる」と反発すれば、政治を敵に回しかねない。会長発言の歯切れの悪さには、そんな事情が絡んでいるようだ。 (小田克也)

 橋本会長は会見で、「NHKの活動自体が放送法に定められている」などと、持って回った言い方で菅総務相の命令に従う考えを示し、「自主的な判断で放送していく」と、「自主性」という言葉を繰り返した。

 それは、命令が下されて拉致問題を放送しても、あくまでNHKの判断に基づいており、政治の言いなりになったわけではないとアピールしたかったのだ。

 NHKは昨年一月、番組が政治的圧力によって改変されたと報じられたことで、視聴者から「やはり政治に弱い」との印象を持たれ、信頼低下につながった。

 そこで、政治と一線を引く方針を明確化。今年三月に公表した番組制作の指針の中にも、政治との関係について「放送の自主自律を堅持する」と明記している。

 このような努力を続ける中で、視聴者から「政治に屈した」と見られ、不信感を持たれるのはマイナス以外の何ものでもない。

 この日の会見で橋本会長が、菅総務相の命令に対し「応じる」とか「従う」などと言わず、自主性を繰り返した背景に、こうした事情があるのは間違いない。

     ◇

 NHKとしては公共放送の基本である自主自律の精神を主張するしか、今はなすすべがないという言い方もできるだろう。

 菅総務相の方針をめぐっては、言論・報道の自由、編集権の侵害に当たるとの懸念が局内外から出ており、当然、橋本会長もこの点は承知しているはずだが、NHKは今、正面切って菅総務相に反発しにくい。

 来年の通常国会には、受信料支払い義務化を盛り込んだ放送法改正案が提出されるといわれる。NHK改革が本格化する矢先、編集権への介入だと問題視し、菅総務相の機嫌を損ねるのはどう考えても得策ではない。

     ◇

 橋本会長のこの日の発言は、こうしたさまざまな事情から自主性の強調に終始したといえるが、果たしてこれで今回の命令放送の実施について世論の理解を得られるだろうか。

 会見でこの点を問われた橋本会長は「NHKの編集の中で自主性をお見せし、必要に応じて説明していきたい」と述べるにとどまった。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20061103/mng_____hog_____000.shtml