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2006年11月01日(水) 16時39分

木村建設・篠塚被告 耐震偽装と因果関係なし 東京地裁判決産経新聞

 ■建設業法違反で有罪

 耐震偽装事件で、偽装物件の施工主だった木村建設(熊本県八代市、破産)の財務諸表を粉飾し、国に提出したなどとして建設業法違反(虚偽申請)の罪に問われた同社の元東京支店長、篠塚明被告(46)の判決公判が1日、東京地裁で開かれた。登石郁朗裁判長は懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡す一方、犯行が耐震偽装を誘発したとする検察側の主張については、「因果関係はない」として退けた。

 登石裁判長は虚偽申請について、犯行動機を「債務超過では特定建設業の許可更新を受けることができず、木村建設の営業ができなくなると考えた」と認定。その上で「平成9年ごろから毎年粉飾決算を続け、虚偽の貸借対照表を国に提出しており、犯行は常習的。財政的基盤を厳格に審査している建設業法の趣旨を無視する犯行で、刑事責任を軽視することはできない」とした。

 一方、検察側が論告で「財務状況が劣悪な中で建設業を続けたことが過度なコストダウンに走らせ、耐震偽装事件を誘発した」と、一連の耐震偽装事件との関係に言及したことについては、「耐震偽装事件との因果関係を認定する証拠はない」と判断。「耐震偽装事件で不正に関与したとの疑いを受けて社会の注目を浴び、相当の社会的制裁を受けている」と述べ、執行猶予とした。

 判決によると、篠塚被告は木村建設元社長、木村盛好被告(74)=詐欺などの罪で公判中=と共謀、同社の平成16年6月期の資本合計が約13億円の債務超過だったにもかかわらず約4億円の黒字と粉飾した貸借対照表を作成。同表に基づいて昨年4月、事業継続に必要な特定建設業の許可を国に申請し、更新を受けた。

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 ≪「組織的犯罪」構図にズレ≫

 【視点】東京地裁は篠塚明被告に有罪を言い渡す一方、一連の耐震偽装事件との関連については「因果関係を認定する証拠はない」と判断した。

 裁判所が因果関係を否定したのは、指定確認検査機関イーホームズの藤田東吾社長(45)に続き2人目。公判が進むに連れ、捜査当局が当初描いた「耐震偽装は組織的な詐欺事件」との見立てからズレてしまったことは否定できない。

 一方で、国民的な関心を集めた事件で、建築物の安全に対する「無責任の連鎖」を浮かび上がらせた捜査は評価に値するだろう。

 一連の事件では6人が起訴されているが、藤田社長は見せ金増資を問われた電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪、篠塚被告は決算を粉飾したという建設業法違反罪で、いずれも耐震偽装とは直接関係ない。

 詐欺に問われているのは、ヒューザー元社長、小嶋進被告(53)と、木村建設元社長、木村盛好被告(74)の2人だけだ。

 検察側は藤田社長、篠塚被告とも、論告であえて耐震偽装事件との関連を指摘したが、裁判所は採用しなかった。

 こうした判決が続いたことに批判はある。藤田社長は「私が逮捕されたのは特定の業者を見逃すため」などとの“陰謀論”を繰り返している。

 しかし、捜査、公判を通じて、不十分な確認検査を行い、安価な施工を請け負って建物の安全性に最後まで責任を持たない建設業界関係者の姿は浮かび上がった。一連の判決は、個々の関係者の無責任さまでをも否定したものではないことを、業界はいま一度肝に銘じるべきだ。(半田泰)

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【用語解説】耐震偽装事件

 元1級建築士、姉歯秀次被告が地震時の圧力を低く入力するなどして建物の構造計算書を偽造し、地震で倒壊の恐れのあるマンション、ホテルが建設、販売された事件。昨年11月に国土交通省が公表した。姉歯被告による偽装物件は18都府県で計99件確認された。警視庁などは今年4〜5月、姉歯被告のほか、マンション販売会社ヒューザーの元社長、小嶋進被告、木村建設の元社長、木村盛好被告、元東京支店長、篠塚明被告ら計9人を逮捕。東京地検はうち6人を起訴した。
(産経新聞) - 11月1日16時39分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061101-00000012-san-soci