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2006年11月01日(水) 20時50分

新型ゲーム機特集:「PS3 vs Wii」 新型機にみる“ゲーム進化論”毎日新聞 まんたんウェブ

ゲームショウで人気となったPS3=三澤紀威写す    ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション(PS)3」が11月11日、任天堂の「Wii(ウィー)」が12月2日に相次いで登場する。高性能、高画質を目指すPS3と新発想によるゲーム人口拡大を目指すWii。04年末のニンテンドーDSとPSPに続く両社の新ハードの投入は、“ゲーム進化史”の大きな分岐点となるのだろうか。新型機誕生の背景と可能性を探った。【河村成浩】

(新型ゲーム機特集「PS3 × Wii」はこちら)

◇PS3 夢の“モンスターマシン”

■圧倒的な迫力映像

 9月22日、東京ゲームショウの基調講演の最後で、SCEの久多良木健社長は「(PS3が売れなければ)我々の夢も実現できない。なので5万円を切る4万9980円とします」と発言。会場はもちろん、ゲームショウに出展する各メーカーの担当者たちにも衝撃が走った。

 5月の米のゲーム展示会「E3」で、PS3の価格は6万2790円と発表された。その後、日本のメーカーからは、「5万円を超える価格では、ハードが普及せず、ソフト開発の見通しが立たない」などの見方が強まっていた。だが、ゲームショウでの“久多良木発言”によって、「勝負になる」「フルスペックのハイビジョン対応で、ブルーレイ・ディスクが動くなら高くない」など期待感のある見方へと空気は一変した。

 PS3は、東芝やIBMと共同開発したスーパーコンピューター並みの半導体チップ「CELL(セル)」を搭載。次世代DVD「ブルーレイ・ディスク」が再生可能で、フルハイビジョンの高精細画質の映像が提供できる。ゲームの3D空間内の物体の動きをリアルタイムで映像として再生する「物理演算」によって、実写のようなキャラクターを自在に操れる「夢のゲーム機」だ。

 ゲームショウでも公開された「ファイナルファンタジー(FF)13」の映像では、美少女が自在に宙を舞いながら敵との戦闘を繰り広げる。場面の最後でクローズアップされる少女は、息を荒げながら、うっすらと汗が光るような表情を見せ、“実写以上”の美しさだ。また、新作「アフリカ」の映像は、ツノを上げてこちら向かって迫ってくるサイ、筋肉を躍動させ疾走するチーターなど、ハイビジョンのドキュメンタリーを見ているような圧倒的な迫力だ。

■「HAL9000」への道

 03年のゲームショウで久多良木社長は「『2001年宇宙の旅』のHAL9000を作りたい」という夢を語った。スタンリー・キューブリック監督の名作SF映画に登場する木星探査船に搭載された人工知能型コンピューターで、物語では乗組員に不信を持ち、人間と対立するほどの能力を持ったものとして描かれている。

 PS3に搭載された「セル」は「細胞」を意味する。PS3をはじめ、冷蔵庫やテレビなどの家電にも搭載されたセルを、ネットワークを通じて連動させ、巨大なスーパーコンピューターを上回る処理をさせようという「グリッドコンピューティング」構想に基づいて開発されたチップだ。PS3の発売は、久多良木社長のエンジニアとして夢を実現させる第一歩とも言えるのだ。

 振り返ると、PSからPS3へと至る流れは、「ゲームの性能向上の進化の歴史」と言っていいだろう。SCEがPSを発売した当時、ゲーム市場は任天堂ハードの独壇場だった。松下電器産業の「3DO」やNECの「PC−FX」など新規参入したハードは相次いで失敗。ソニーは、共同でゲーム機を開発していた任天堂と決裂し、SCEを立ち上げてPSを生み出した。

 PSは、ゲームソフトの媒体にカセット式のロムでなく、大容量データを積み込めるCD|ROMを採用、映像や音声など一気に向上させた。6年後に登場したPS2は、さらに大容量のDVDに対応することで、リアルなグラフィックや迫力あるムービーを実現。子供のおもちゃだったゲーム機を大人も楽しめる機器に変えた。

 高画質な映像の実現とソフト制作時のロイヤリティー(権利料)引き下げなどによって、500以上の開発会社がPS陣営に参加し、「FF」に代表される世界的なゲームが次々と生み出された。その結果、PS、PS2はいずれも世界で1億台普及し、SCEはゲームの世界標準を握ることに成功した。

■開発費高騰の克服が課題

 ゲーム機の性能を高め、「よりリアルな」方向へ進化させていくSCEの志向は、一方でゲーム開発費の高騰を招いた。高画質のゲームに対応するCGを制作するには多大なコストがかかる。その負担に耐えるため、ゲーム業界は合併、吸収による再編が進み、「スクウェア・エニックス」や「バンダイナムコゲームス」などの大メーカーが誕生した。

 さらに高性能なPS3では、開発費は10億円以上とPS2の数倍に膨れ上がるといい、発表当時からこの開発費の問題が指摘されてきた。00年のPS2の登場時でさえ「こんな高性能のスペックを使いこなせるのか」という声が上がったが、今ではパワー不足と言われているのも事実。映像・演出重視を追求するゲームクリエーターが待ち望んだゲーム機なのだ。

 開発コストについて、スクウェア・エニックスの和田洋一社長は「これまでの開発手法では無理。データの自動生成など全く違う手法が必要」という。久多良木社長も「ネットワーク上でみんなが写真を投稿したり、地図情報と連動したりすることで世界を作り上げ、それを共有すればいい」と語る。

 PS3が夢のゲーム機になるためには、さらなる“生みの苦しみ”が待ち受けているが、克服すれば史上空前の“怪物”ゲーム機になる可能性を秘めている。

【関連記事】ゲームショウでPS3を体験 23タイトル完全レビュー

◇Wii “新ゲーム生活”を提案

■「ゲーム人口の拡大」目指す

 「1世帯当たりのユーザー数をいかに増やしていくか、を考え抜いて開発したのがWiiです」。任天堂の岩田聡社長は9月14日に開かれた発表会「Wii Preview」で語った。

 Wiiの最大の特徴はコントローラーだ。テレビリモコンのような棒状の「Wiiリモコン」を、モニターに取り付けたセンサーに向けて、ラケットや剣のように振って操作する。それに小型のレバー付きコントローラー「ヌンチャク」を接続し、両手でパンチを繰り出したり、弓を引き絞って矢を放ったり、さまざま動作をすることで、キャラクターを動かすのだ。

 この操作方法の革新は、大ヒット携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」の流れをくみ、「ゲーム人口の拡大」を目指したものだ。DSの発売前に岩田社長は「若い女性にもゲームを遊ばせたい」と語っていたが、Wiiでは「1世帯当たりのユーザー数の拡大」という目標に向け、「年齢・性別・ゲーム経験の有無を問わない」「家族全員にとって、自分に関係のある存在になる」「毎日電源を入れてもらえるようにする」というキーワードを掲げている。

■DSで社会現象的ヒット

 岩田社長が、任天堂の顔だった山内溥前社長の後任として就任したのは02年。当時、ゲーム機の高性能化競争で、ニンテンドウ64、ゲームキューブという据え置き型ゲーム機ではSCEのPS、PS2に遅れを取り、「任天堂限界説」も出ていた。そうした状況の中、岩田社長は「高画質、高性能を追求するゲーム機の成功法則は限界に来ている」といい、「異質な体験」をユーザーにさせるというコンセプトでDSの開発を発表した。

 04年12月に発売されたDSは、2画面でタッチパネル付きというこれまでのゲーム機にはないインターフェースと操作方法で、「タッチDS」を合言葉に各地で体験イベントを開き、人気アーティストの宇多田ヒカルさんをイメージキャラクターにしたCMを展開。ペット育成ゲーム「ニンテンドックス」など新機軸ゲームを投入して、ほぼ同時に発売されたSCEの「PSP」と携帯ゲーム機で激突した。

 05年5月、川島隆太・東北大教授が監修した「脳を鍛える大人のDSトレーニング」(通称・脳トレ)が発売され、当初は目立った動きがなかったが、「ニンテンドッグス」で獲得した女性ユーザーに加え、「老化防止になる」と中高年にも次第に広がっていき、同年末までかけて100万本出荷を達成。05年12月に続編の「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」が発売され、女優の松嶋菜々子さんのCMが放送されると、「脳を鍛える」と合わせて大ブレークした。

 その後も英語、料理、辞書などこれまでゲームの対象となりにくかった題材を取り上げた「非ゲームソフト」も相次いで登場。「スーパーマリオ」「ポケモン」などのビッグタイトルも投入し、人気を不動のものにした。DS本体も品薄状態が続き、06年3月に新型「DSライト」が発売されると、販売店には徹夜の行列ができた。まさに「社会現象」的なヒットとなり、岩田社長も「ゲームに全く興味を持っていなかった人が毎日DSを触っているという例は珍しくない。ゲーム人口の拡大を実感できる」と語る。

■Wii版「脳トレ」が出るか

 こうしたDSの大成功にも、岩田社長は「Wiiの普及を100%保証するものではない」という。最大の理由は「Wiiは持ち運べない」からだ。

 携帯できるDSの場合、DSをプレーしている姿を見たり、触らせてもらったりすることで、ゲームに関心のない人たちもDSを知ることができた。据え置き型のWiiでは、その手法は不可能なため、従来型のソフトに加え、幅広い層に関心を持たせるサービスを提供していくという。

 第一が、ファミコンやスーパーファミコン、メガドライブ、MSXなどのゲームがダウンロードで購入できる「バーチャルコンソール」だ。年内に60本、その後は毎月10本のラインナップで、懐かしいゲームが500円から販売される。大人になってゲームから離れてしまったファミコン世代を引き戻そうという狙いだ。

 デジタルカメラや携帯電話で撮った写真やインターネットの閲覧、天気予報、ニュース、そして家庭向けの伝言板機能など実用的なサービスとゲームの起動を「Wiiチャンネル」という形でまとめた。ゲームに関心を持たない人にも、Wiiを触る経験をしてもらえれば、隣にあるゲームも試してもらえるだろうという考えだ。

 ソフトも、テニスや野球、ゴルフなどを直感的な操作で体感できる「Wiiスポーツ」やDSとワイヤレスで連動する「ポケモンバトルレボリューション」、任天堂の代表的RPG「ゼルダの伝説」など幅広いタイトルが4800円〜6800円で発売される。

 だが、Wiiが狙う「ゲーム人口の拡大」が本当の意味で成功するには、DSにおける「脳トレ」のような幅広いユーザーに受け入れられるゲームの開発が不可欠だ。独特の操作方法などWiiの特性を生かし、新たな発想のゲームが生み出せれば、「Wiiのある生活」が当たり前になる未来が開けるだろう。

◇エンターブレイン浜村弘一社長 Wii先行、追い込むPS3

 PS3とWiiは、並存すると思っている。これは両ゲーム機の弱点を考えれば明確だ。PS3は、既存のゲーム機の延長線にあるため、脳トレゲームのような新機軸のアイデアを盛り込みづらい。逆にWiiはアイデアを盛り込みやすいが、グラフィック面が弱く、RPGなどでは苦労するだろう。全く違うハードなので、ユーザー層は一部重なるものの大きく割れるのではないか。

 最初は価格の安いWiiの方が数字を伸ばすだろうが、5年で見れば分からない。PS3も値段を下げて巻き返すことは間違いないし、そもそもゲーム機は「安ければ売れる」というものでない。いかに面白いゲームを作るかがポイントだからだ。

 Wiiのゲームを作るにはセンスが必要で、現在発表されているWiiのゲームには、完全にらしさが出たゲームはない。面白いゲームを作るのは宮本茂・任天堂専務(スーパーマリオの生みの親)でも大変だろうが、日本人クリエーターの底力の見せどころでもある。ファミコンゲームのダウンロードサービスもあるが、これはゲームを遊ばなくなったファミコン世代向けで、多くのユーザーや子供たちは新作ゲームを望んでいるはずだ。

 PS3は、けた違いの表現能力を実感できる「FF13」や「メタルギアソリッド4」などの大作をできるだけ早く提供できるかが課題だ。PSブランドには、一定のファンがついているので、今回の値下げ発表で100万台は売れるだろう。だが、300万台以上となると、さらに値下げして4万円を切る価格にするなど、次の一手が必要となるだろう。

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(毎日新聞 まんたんウェブ) - 11月1日20時50分更新

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