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2006年11月01日(水) 20時56分

MNP受け付け停止、主因は家族割引──ソフトバンク孫社長+D Mobile

 写真:ITmedia    ソフトバンクモバイルの孫正義社長と阿多親市専務執行役情報システム・CS統括本部長(CISO)兼カスタマーサービス本部長は10月30日記者会見を行い、10月28日と29日に番号ポータビリティ(MNP)手続に問題が発生し、受け付けを停止した理由と対策を説明した。

 対策の内容は既報の通りで、11月5日までは機種変更や契約変更、買い増しを受け付けないなどの制限を設けて、MNPの処理を最優先で実行しながら増強したシステムの様子を見る。11月5日以降は通常業務に戻す計画だ。

 会見で孫社長は、ユーザーと他キャリアに迷惑をかけたことについて謝罪した。しかし「MNPの処理を行う能力が不足していた点は反省しているが、MNPの本質である“流動性を高める”“競争を促進する”という点では貢献しているのではないかと思う」と話すなど、従来通り強気の姿勢は崩していない。

 システムの処理遅延が発生した原因については、基本的に「新料金プランが好評で新規契約、機種変更が増えた上、MNPを利用した転入出も多かったため」という見解のままで変わらず、ドコモやKDDIが主張している「ソフトバンクモバイルからの転出が多かったため」という言い分とは相違したまま。結局MNPを利用して転入・転出した契約の数や、転入と転出でどちらが多いかといった情報も「今後は月に一度公開していく」(孫氏)と発言したものの、今回は公表しなかった。

●MNP手続きを停止した原因は「家族割引」の処理

 システムに障害が発生したそもそもの原因は、従来の「家族割引」の制度に関連する処理が他社と比べて複雑だったためだという。

 ソフトバンクの家族割引は、主回線には基本使用料の割引がなく、副回線の基本使用料が半額になる。他社が実施している「ファミリー割引」や「家族割」のように、家族の基本使用料が一律割引されるものとは異なり、主回線と副回線が厳密に分けられているのが特徴だ。この主回線と副回線という区分けが混乱を生むきっかけとなった。

 ソフトバンクの業務システムは、家族割引を組んでいる回線のうち、主回線がMNPで転出するなどの理由で解約された場合、残りの副回線の中から自動的に主回線を設定するようになっている。しかし28日、29日には主回線と副回線の一部が順次解約されるといった事象が発生した。その際に、主回線が解約されたことを受けて自動的に主回線扱いに変更されていた元副回線を、副回線として解約しようとしてエラーになる、といった現象が多発した。

 その結果、ただでさえ転入出の処理が重なって負荷がかかっていた業務システムに、エラーメッセージによる負荷がかかり、システムに輻輳が起きた。この輻輳により、他社からMNP転出者に関する問い合わせが来ても120秒以内に返信することができなくなったため、ドコモとKDDIからの再問い合わせも増え、さらに状況を悪化させた。最終的には、MNP手続きが約束通りの時間で処理できなくなったため、最終的にはドコモとKDDIからMNP手続きの停止を通告されるに至った。

 29日の午後、MNP手続きを停止したあとも新規契約などの業務を継続していたのは、「ドコモとKDDIが、ソフトバンク側の体制がしっかり整ったことを確認できるまで手続きの再開を拒んだためで、業務システム自体は動作していたのでソフトバンクだけで完結する処理は実行できた」(孫氏)のが理由だ。

 システム能力自体はMNPに向けて十分に増強してきたが、「それをはるかに超えるお問い合わせとお申し込みをいただいた」と、阿多氏は準備していたシステムの能力が不足していたことを認めた。土曜日から日曜日にかけて、従来の2倍ができるようシステムを改修したが、それでも日曜日には処理が間に合わなかったため、10月30日からは、MNPに対応するためのシステムと回線を開通させるシステムを直結し、従来から利用している業務システムは経由しない形に改変した。これにより、滞りなく処理が行えるようになっているという。

 「処理能力を増やすのに必要な人員やシステムはすべて投入せよ、と伝えてある」と孫氏。「経費や予算を考慮することなく、最大限の誠意をお客様に示し、極力迷惑がかからないよう対策を進めている」と説明した。対策費は「集計してみないと分からないが、おそらく数億円程度で、決算にも影響はあるだろう」(孫氏)と試算する。

 説明を聞く限りでは、ソフトバンクからの“転出”が原因でシステム障害が起きたように思えるが、ソフトバンクでは処理に遅延が生じるほど負荷がかかった理由について「転入、転出、新規契約や機種変更など、すべての契約が関係している」(阿多氏)とだけ話した。

●接客時間は店員の慣れとともに短くなる

 孫社長が「シンプルにした」とする新料金体系のせいで、かえって料金プランが複雑になり、店頭での接客時間が延びているのではないか、と指摘する声も上がったが、これには「シンプルに安いということをご理解いただけるよう、見直しも含めて日々よりよい料金プランに変更している。問題だと指摘されるところがあれば、できるだけ早く改善していっている。基本的には販売員が慣れてくれば解決される問題」との認識を示した。

 「最初にスーパーボーナスを始めたときも説明にかなり時間を要していたが、2週間ほどでみな慣れてきた。時間が経てば新聞や雑誌の解説も出てくるし、我々も解説用の資料やビデオを用意する予定だ。今回も徐々に慣れていくことを期待している」(孫氏)

 店頭ではブループラン(ドコモ)、オレンジプラン(au)、ゴールドプラン、ソフトバンク向けの従来の料金プランと大きく分けても4つの料金プランを把握しておく必要があり、販売員の苦労は並大抵のものではないと推察されるが、接客に要する時間は“他社より安い”という点の徹底と“慣れ”で短縮可能だという。

●ディズニーランドも、オープン初日は混雑して人が入りきれなかった

 システムダウンにより手続きが滞ってしまうという問題を起こしたソフトバンクモバイルだが、冒頭でも述べたようにその理由は「新料金プランが好評なうえ、MNPを利用した転入出者が多かったため」としており、番号ポータビリティでの転出者が増えたのが原因、との推測は否定した。

 「お客様が想定していたよりもたくさんいらしてくださるというのは、今までの料金体系に不満を持っていたお客様がたくさんいらっしゃったからだと言えると思う。お客様に対して歓迎されるプランを発表できなかったなら、これほどお客様は来てくださらなかっただろう」(孫氏)

 この6日間の具体的な番号ポータビリティ転入出数については、基本的に新料金プランなどの受け付けが2日遅れの10月26日から始まったために、6日間だけを抽出すると「イレギュラーな形になってしまう」との理由で明らかにしなかった。「FAXでの注文や入力中の数字などもあるので、ソフトバンク本来の力の数字はまだ分からない」と孫氏。「ただ私自身は26日以降は転入が多いと感じている。登録に関わるシステムがしっかりしていれば、もっと多くのお客様が獲得できたと思っている」と話した。

 「受け入れ能力が足りなさすぎて、ご迷惑をおかけしたことは確かに反省している。ただ、ディズニーランドもオープン初日には人が押し寄せて入れない人もいるほどだった。MNPの本質である“流動性を高める”という点では貢献している。また、より競争を促進させて、お客様に利益を還元させるという点においても一生懸命頑張っているということは心のどこかに留めておいていただきたい」(孫氏)

 会場では番号ポータビリティの受け付けを停止していた10月28日、29日に通常通りCMを流していたことにも言及があったが、これについては「変更することも検討はしたが、10月30日からは通常通り受け入れることができたので、流し続けることにした。一応今のまま様子を見る。本来はあってはならないことだが、もし今後大きなトラブルが再発するようなら検討しなおす」と述べるにとどめた。

 また「世界一高い」としていた携帯料金については、「統計の取り方によっていろいろあるが、私自身は携帯料金が高いと感じていた」と孫氏。「若者が携帯の料金を払うためにアルバイトをするような状況はおかしいのではないか、と思いこのような0円施策を打った」とその心中を明かした。

 「複雑怪奇な料金体系を、プランが3つだけのシンプルなものにした。他社への通話料が高い場合もあると言われ30秒20円にした。割賦払いの期間は2年では長いという指摘があり、1年、1年半のプログラムも用意した。できるだけ混雑を解消できるような手を一歩一方っている。しかし店頭はまだ混雑しているので、多くのお客様に引き続き大変ご迷惑をかけると思うが、誠心誠意、日本の携帯電話業界に健全な競争とサービスを提供していきたい」(孫氏)

http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/
(+D Mobile) - 11月1日20時56分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061101-00000020-zdn_m-sci