悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年11月01日(水) 02時35分

11月1日付・読売社説(2)読売新聞

 [損保不払い]「顧客軽視体質を一掃できるか」

 損害保険各社の保険金不払いが、また大量に判明した。「保険金はなるべく払わずに済ませる」という顧客軽視の体質が、蔓延(まんえん)していたのではないか。

 損保大手6社のまとめによると、過去5年間の医療保険など「第3分野」と呼ばれる保険商品での不払いは、計4365件にのぼった。

 保険に入る前から発病していた場合、保険会社は医療保険の保険金を支払わずに済む。その認定には医師の診断が必要だが、保険会社の社員が勝手に「支払い不要」と決めつけていた。保険の対象とは関係のない病歴の告知をしていなかったからと、支払いを拒んだ。

 そんなケースが、多く見つかった。

 「安心」を売るのが保険会社だ。万一に備えて加入したのに、いざ病気になると保険金の支払いを不当に拒否されては、契約者はとても納得できない。

 損保の主力商品である自動車保険などをめぐっても、先に大手6社で過去3年間に26万件、162億円もの不払いがあったことがわかっている。

 事故を起こした際の見舞金や代車費用を負担する特約を実行せず、一つの事故で複数の保険が適用されるのに、一方を見落とすケースが多かった。

 自動車保険市場が成熟化し、新規顧客の獲得が難しくなる中で、他社との差別化や保険料収入の維持を狙って、多くの特約が付けられるようになった。大手だと数千種類にも上り、保険会社自ら、管理が十分できない状態になっていた。

 事故に遭った顧客に対し、どんな保険金が支払われる可能性があるかを通知するサービスも欠けていた。請求がないのをいいことに、保険金支払いを故意に怠っていたのではないか。

 各社は、特約の削減など商品見直しに着手し、払える保険金の一覧を顧客に送付するなどし始めたが、当然だろう。

 昨秋、各社は不払いの自主調査結果を発表したが、金融庁検査などで損害保険ジャパン、三井住友海上火災で新たな不払いが見つかり、業務停止などの行政処分を受けた。金融庁の指示による今回の再調査では、自主調査に比べ、自動車保険などの不払い件数が2倍に増えた。

 「支払うべき保険金はきちんと払う」のは、保険ビジネスの基本だ。しかし、経営陣から一線の社員、代理店まで、営業成績を上げることに目を奪われ、この基本がおろそかになっていた。

 トップが先頭に立ち、顧客重視の考え方を徹底する。社員を再教育し、保険金の不当な不払いの内部チェックを強化する。契約者の信頼を回復するには、企業をあげて基本を再確認するしかない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061031ig91.htm