悪のニュース記事

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2006年10月31日(火) 13時48分

10月31日付・よみうり寸評読売新聞

 スピードが命で、他社との競争に負けられない業界に〈急(せ)いては事をし損ずる〉とか〈急がば回れ〉などと言っても、聞く耳持たぬというところだろう◆でも、トラブルが起きてみて、少しはその意味が分かったかも知れない。携帯電話大手のソフトバンクモバイルが2日続けて契約切り替え業務の停止に追い込まれた話だ◆せっかくの「番号持ち運び制度」もスタートからつまずいた。同社の契約者同士で通話やメールが無料になる新料金を制度開始前日に突然発表したための混乱だ。競争が先走り、それを裏打ちするシステムが追いつかなかった◆全国で騒ぎになっている高校の必修逃れの失敗と共通の根っこがある。まず競争に焦ったのが似ている。目先のことばかり見ていて大切な準備ができていないのも同じ◆ソフトバンクの見た目先は価格競争で相手を出し抜くこと、高校の見た目先は受験偏重の効率だ。失敗して収拾の手配に慌てているのもまた同じ。まるで違う世界で似た失敗。今の日本の姿だ◆そこに〈もうこりた〉(忘己利他)の姿は少しも見えない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061031ig05.htm