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2006年10月28日(土) 01時38分

10月28日付・読売社説(2)読売新聞

 [貸金業法改正]「『特例』導入の見送りは当然だ」

 多重債務者を生む原因となっていた消費者金融などの高金利の是正へ、一歩前進した。

 自民、公明両党が、貸金業規制法などの改正案を決めた。9月にいったんまとめた案では、上限金利引き下げ後も、特例で高金利を認めるとしていたが、一転して特例の導入を見送った。

 方針転換は、世論の反発が来年の参院選に悪影響を及ぼすことなどを懸念したためだろう。

 改正法の公布からほぼ3年後に、現在29・2%の出資法の上限金利を引き下げて、20〜15%である利息制限法の上限との間の「灰色金利」を撤廃する。

 当初案では、この後も2年間、既存の借り入れがない顧客向けなら、少額・短期の貸し付けに限って年25・5%までの金利を特例で認めるとしていた。だが、「灰色金利廃止の抜け穴になる」との批判が、与党内からも出ていた。

 特例の容認は、借り手の返済負担を軽くして多重債務者の発生を防ぐ制度改革の趣旨に反する。見送りは当然だ。

 当初案に盛り込まれていた利息制限法の金利適用区分の見直しも、見送りが決まった。区分見直しは、貸付金額によっては、今より上限金利が引き上げられる結果になってしまう。妥当な判断だ。

 業者が借り手に加入させる生命保険については、借り手の自殺でも保険金が支払われる契約を禁止する。借り手保険には、「自殺に追い込むような厳しい取り立てを助長している」との批判が多かった。禁止して当然だろう。

 ただ、上限金利の引き下げまでに、特例の是非などを再検討できるとの「見直し規定」を設けたのは、気がかりだ。世論が冷めるのを待って、規制の抜け穴作りが動き出すようでは困る。金利引き下げまでに3年を要するのも、長すぎるのではないか。短縮を検討すべきだ。

 政府は、改正法案を今の臨時国会に提出する。法案には金利引き下げのほか、過剰貸し付けの防止策や、貸金業への参入規制強化なども盛り込まれる。

 多重債務者はすでに200万人を超える。これ以上増えるのを防ぐために、これらの対策の実施は急務だ。

 一方で、急なリストラや病気で窮地に立ちながら、必要な資金を借りられないような人に対する安全網や、すでに多重債務に陥った人の立ち直り支援策などの議論は、深まっていない。

 相談、助言体制の強化に加え、生活保護や、公的な貸付制度の拡充を求める意見もある。納税者間の公平感を損なわずに、どんな施策が可能か。法改正後にも課題が残る。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061027ig91.htm