悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年10月25日(水) 00時00分

法教育朝日新聞

 ■学ぼう社会をつくる「法」■

 「エステの商品を買ったことにして、クレジットを組んで欲しいげんけど。バイト代も出すし。クレジットのお金はうちの会社で払うから、迷惑はかけんよ」

 こんな会話が友人同士で交わされたのだろうか。数年前、金沢でも大規模な名義貸し事件があった。買うつもりも、クレジット契約を結ぶつもりも、ましてそれを自分が払って返していくつもりもないのに、自分の名義でクレジットを組む。あるいは、自分名義でサラ金から借り入れをし、現金とカードをそのまま他人に渡す。こんな話に簡単に乗ってしまう人が後を絶たない。

 これを読まれて、「え、何が悪いの?」と思う方は、ちょっと危ない。

                    〜   〜   〜

 「知人にお金を貸したのだけど、なかなか返してもらえない。借用書がないが、大丈夫か」

 こんな相談も、意外とよくある。お金を渡して、いつ返すのかという約束があれば、金銭消費貸借契約が成立する。でも、あとから相手が、返すなんて言ってない、と言い出したら、裁判をしても返してもらえるかどうかは危うい。

 日本では、一般に、書面がないと契約が成立しないという建前はとっていないが、契約が成立していることは貸した方が証明しないといけないから、書面があった方が、相当安心だ。

 また、そもそも相手に返せる資力がなければ、どうしようもない。そんなとき、相談者からは、「弁護士なら何とかしてもらえると思ったのに。法律は冷たい」と言われることもある。でも、後の祭り。

 現代は契約社会だ。何げない行動が、実は「契約」であることも多い。したがって、その「契約」によって、様々な効果がもたらされ、お互いにそれに拘束される。

 でも、そのことをちゃんと認識している人は、少ない。ただ、ある程度それを理解し、考えてから行動する癖をつけておかないと、これらの事例のように、トラブルに巻き込まれることもある。前者の事例も、クレジット会社との関係では、自分がクレジットを組んだことになっているので、返す義務が生じる。(クレジット会社側の問題も別にあるのだが)

                    〜   〜   〜

 近年、各地で「法教育」の取り組みが始まっている。法教育とは、法の理念、契約の原則、憲法、紛争解決の方法、といったものを、小さいころから、徐々に理解し、身につけていくことを目指すものである。それなりの時間をかけ、トレーニングすることが必要で、そのための教材も少しずつできてきている。私も所属している金沢弁護士会子どもの権利委員会でも、この法教育に積極的に取り組みたいと考え、準備をしている。興味のある先生は、金沢弁護士会(076・221・0242)へご連絡を。

 お互いの信用でやっていけた時代のほうがよかったのかもしれない。でも、「法」を知ることは、もはや自分を守るためにも、最低限必要なことだろう。現代社会は、すでにこんなに複雑になってしまっているのだから。

 (弁護士)

http://mytown.asahi.com/ishikawa/news.php?k_id=18000140610250001