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2006年10月21日(土) 17時07分

仲良し大家族に悲劇 豊前5人焼死 孫託し再び火中へ 炎と煙一気に襲う西日本新聞

 21日早朝、福岡県豊前市市丸の東陽一郎さん(69)方で上がった火の手は、瞬く間に古い木造家屋を火炎で包んだ。行方が分からなくなっている東さんの妻玉喜さん(67)は一度は逃げ出しながら、家族を救うためもう一度、火の中に飛び込んだという。10人家族のうち5人が遺体で見つかる悲劇に、駆け付けた近所の人から嗚咽(おえつ)が漏れた。

 「ドカン、ドカンと爆発するような音がした」。火事に気付いた近所の住人は声を震わせた。消防も消火活動が精いっぱい。とても逃げ遅れた人を助け出せるような状況ではなかったという。

 出火直後、孫を抱いて出てきた玉喜さんは近所の人に子どもを手渡すと、姿を消した。一家の知人の若本泰弘さん(54)は「旅行を取りやめて帰宅した東さんから『妻はいったんは家の外に出たが、足腰が悪い母(アサ子さん)を助け出そうと、また家の中に入った』と聞いた」と話した。

 一家は4世代同居の10人家族。子どもの笑い声が絶えず、玉喜さんはいつも「5人も孫がいるから楽しい」と笑顔で話していたという。大分県中津市から駆け付けた玉喜さんの弟夫婦は「17日に会ったばかり。こんなことになるなんて…」と言葉を失った。

 亡くなったとみられる江口慎二さん(37)の三男莉記ちゃん(3つ)と二女小梨伽ちゃん(2つ)、けがをした二男大祐ちゃん(5つ)が通う同市のちづか保育園に悲報が届いたのは午前8時すぎ。保育士の女性が玄関で泣き崩れた。

 奥村秀喜園長によると、9月30日の運動会には家族全員で応援に来た。小梨伽ちゃんはクラスで一番元気な子だった。莉記ちゃんも運動会でかけっこやリレーを楽しんだという。

 現場に走った奥村園長は母親の晴美さん(38)を見つけた。「晴美さんは『大変なことになった。自分だけが助かって…』と泣き崩れ、その後は放心状態だった。慰める言葉がなかった」と肩を落とした。

=2006/10/21付 西日本新聞夕刊=
(西日本新聞) - 10月21日17時7分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061021-00000022-nnp-l40