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2006年10月18日(水) 00時00分

「自閉っ子」の生の声を本に朝日新聞

 自閉症など発達障害に悩む人たちを支援する佐賀市のNPO「それいゆ」の服巻智子・相談センター長(47)が、自閉症の教諭や会社員との対談をまとめた「自閉っ子、自立への道を探る」(花風社)を出版した。一つ一つの動作を考え過ぎて買い物するだけで疲れたり、食器の音を怖がったりする「専門家も知らない日常の細かな悩み」を採り上げている。

 服巻さんは県内の養護学校の教諭を経て、英国に留学して自閉症支援について学び、02年から同センター長として活動している。

 自閉症は脳機能の先天障害と考えられ、生活パターンの変化を嫌がったり、他人とうまく会話ができなかったりする。

 服巻さんは約千人と接し、一人ひとりの症状が千差万別だと痛感した。専門書に載っていない症状もあり、医師から「自閉症ではない」などと言われ、診断書を出してもらえなかった人もいるという。

 「専門書や診断室内の様子からは分からない当事者の多様性を伝え、支援の方法を考えてもらいたかった」

 4〜5月、大企業のベテラン社員や牧場で働く人ら県内外の6人と対談。そのうち、佐賀市の藤家寛子さん(27)、いずれも関西に住む50代の女性教諭、30代の男性会社員の話を本にまとめ、8月に出版した。

 藤家さんは約2年前に横浜で一人暮らしをしていた時の体験を語った。買い物に行った店で切り売りしていない野菜を見ただけで、「1人分を使った後の残りはどうするのか」「明日の献立はどうしよう」「余りは捨てて良いのか」と悩んだ。考え始めると頭が混乱して、食べるのも放棄して、お湯だけを飲んでいた時期もあった。

 服巻さんは「自閉症の人は、一つ一つの動作を理詰めで、丁寧に考えて疲れ切ってしまう」と指摘する。この対談では「1日に大きなことをする場合は、一つにとどめる」とアドバイスした。また、藤家さんのような人には、1週間の献立を代わりに考えてくれるボランティアなどの支援が求められているという。

 対談の際に、相手の意見への疑問点も述べた。男性会社員は、職場で障害を理由に差別されて会社側に謝罪を求めた際、「就職前に障害のことを言わなかったのが悪い」と反論されたことを感情的に語った。

 服巻さんは、入社の条件に障害の申告が含まれていれば企業が反論する可能性があることや、謝罪の要求の仕方が会社側にとって攻撃的に思えた可能性を指摘。「企業の論理にそれなりの理由があることを学んでおくと今後役立つ」と結んだ。

 自閉症の人は、あいまいな表現ではうまく伝わらない場合があり、率直に語った方が分かり合える。同情してお茶を濁すのではなく、自閉症の人が社会と折り合える方法を考えてほしいと思う。「本が接し方の参考になれば」という。

 四六判254ページ、1680円。全国の書店や花風社のホームページなどで発売中。問い合わせは同社(03・6230・2808)。

http://mytown.asahi.com/saga/news.php?k_id=42000000610180003