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2006年10月18日(水) 00時00分

音楽や文学の著作権、ネット普及で身近に読売新聞

 文学や音楽などの著作権を巡り、保護期間の延長問題をはじめさまざまな動きが活発化している。著作権は作家や作曲家らが持つ権利ではあるが、保護期間が過ぎた文学作品や音楽は安価に楽しめるなど、消費者の利益とも大いに関係がある。インターネットの普及もあり、多くの人が著作者になる時代でもある。もっと関心を持ち、考える必要がありそうだ。(西内高志)

 チャイコフスキーのバイオリン協奏曲、ラフマニノフのピアノ協奏曲——。大阪府内の公務員の男性(49)は、クラシック音楽の名曲を無料で聴けるホームページを開設している。曲数は約800曲。持っている5000枚以上のレコードやCDの中から選んだものだ。

 こうしたことが可能なのは、収録した曲がどれも、作曲家と演奏家、レコード会社の持つ著作権などが保護期間の50年を過ぎ、許諾なしでも広く配信できるからだ。利用者は曲をデジタル携帯音楽プレーヤーに録音もできる。

 男性は「売れないという理由で絶版となり、入手しにくかったものも、保護期間が過ぎれば、誰もが聴けるようになる」と意義を語る。同様のホームページは少しずつ増えているという。

 保護期間が過ぎた著作物をビジネスに活用する例もある。出版社のソフトバンククリエイティブ(東京)が運営する電子絵本の有料ホームページ「おはなし絵本クラブ」は昨年12月から、夏目漱石の「坊っちゃん」など20作品を、電子書籍の形で無料で読めるサービスを始めた。100円ショップ「ザ・ダイソー」では名作文学30作品の文庫本を1冊105円で販売。人気を集めている名作映画の廉価DVDも一例と言える。

欧米並み70年に

 こうした中、日本文芸家協会など、著作権を管理する16団体は共同で先月、50年から70年へ保護期間の延長を求める声明を発表した。欧米では大半が70年を採用していることもあり、統一しようというものだ。

 これには賛否が分かれている。延長派は「権利が長く保護されれば、創作意欲が高まる。これが結果的に文化の振興につながる」と主張。対して、著作権切れの文学などを収録したホームページ「青空文庫」の呼び掛け人、富田倫生さんは「インターネットが発達し、経費をかけず多くの人に著作物を提供できる時代になった。著作者の権利を強めるより、消費者の利用度を高めるべきだ」と主張する。

 著作権法は、文化的な創造物を公正に利用できるようにしながら、著作者の権利保護を図ることで、文化の発展につなげるのが目的。要は、二つのバランスをいかに取るのかが大切になる。

 横山久芳・学習院大学助教授(知的財産法)は「消費者にとっても著作権は身近な問題になりつつある。抽象的な議論に終始せず、延長したら具体的にどんなメリットやデメリットがあるのかを提示し、消費者も交えた議論が必要だ」と指摘する。

著作権  知的財産権の一つで、文学作品や音楽などの著作物を創造した作家や作曲家など著作者に与えられた権利。著作者以外の利用を認めたり禁止したりできる。日本の著作権法では、保護期間は映画の場合は公開後70年だが、その他の分野は著作者の死後50年。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20061018nt08.htm