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2006年10月18日(水) 00時00分

本人訴訟で過払い金取り返す 立ち読み、図書館で猛勉強朝日新聞

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裁判所に提出された手書きの訴状や準備書面。過払い利息は、手元に残していた現金自動出入機のレシートをもとに計算したという

 消費者金融や信販会社などに不要な「過払い金」を支払い続けた京都市内の女性(44)が、書店で手にした法律書を読んで一念発起、弁護士らに頼らぬ本人訴訟に持ち込み、貸手11社から約365万円を取り返した。残る1社への返還請求訴訟も、最高裁が本人訴訟としては異例の上告受理を決定。20日に弁論が予定され、敗訴した二審判決見直しの公算が大きい。女性は「お金がなくてもできるんです」と、全国200万人以上、といわれる多重債務者を励ます。

 女性は大学卒業後、OA機器メーカーに就職。15年ほど前、商社の営業マンだった夫(42)とともに脱サラし、京都市内で喫茶店を始めた。

 だが、門外漢に起業は容易でなかった。多額の開店資金に、経営不振、店舗の大家との不動産トラブルが重なり、93年5月、大手信販会社から事業資金として約10万円を借り入れることに。高金利のもと、すぐ支払いに行き詰まり、借金を新たな借金で返す自転車操業に陥った。

 借入先は十数社に上り、月々の返済は約15万円にまで膨らんだ。夫は「初めての商売で、どんどん資金が出ていった。食事代にも事欠く生活だった」と振り返る。

 転機は03年。女性は立ち寄った書店で、本の背表紙に目をとめた。「クレサラ(クレジット・サラ金の略称)訴訟の実務」。買える金はない。その場でむさぼり読んだ。本来支払う必要のない法定利息を上回る過払い金の存在を知り、店の帳簿を繰って返済総額をはじき出してみた。

 「過払い金の多さに衝撃を受けました。返済に追われた今までの苦労はなんだったのか、って。絶対に取り返してやろうと誓いました」

 過払い金の返還請求は、一般に(1)債権会社に返還請求書を送付(2)返済に応じなければ調停申し立てや提訴(3)和解や判決など——という流れ。女性は家計に余裕がなかった。独力で闘うことを決意し、法律は書店での立ち読みや図書館通いで学んだ。各社へ返還請求書を送る切手代や、提訴に必要な印紙代も工面できない。小銭をためて金券ショップで切手を買い、配達証明郵便で請求書を発送した。

 頻繁だった貸手からの返済の督促電話はぴたりとやんだ。大半の会社が請求を無視したため、女性は法律書の説明に従い、手書きの訴状で03年8月、京都地裁に消費者金融1社を提訴した。8カ月後、和解で過払い金30万円が手元に戻ってきた。これを元手に、ほかの会社を次々に訴えていった。

 訴訟は和解を含め連戦連勝。返還された金でパソコンを購入、インターネットで最高裁の判例などを調べ、法廷での主張に役立てた。約3年間、多い時は週3日、自転車で裁判所に通い詰めた。

 今年8月、夫婦は最高裁から電話を受けた。一、二審で唯一敗訴した訴訟の上告受理を伝える内容だった。

 一連の訴訟の中では一度も出廷しない貸手の不誠実さや、請求額の一部で納得するよう迫る調停委員、女性が数千円の訴訟費用の返還にこだわる理由を理解しない裁判所に、怒りを感じたこともたびたびだった。

 「貸す側は1日も、1円も、返済をまけてくれなかった。だから、私は徹底的に争った。法律と無縁だった私にできたのだから、多重債務で悩む多くの人も勇気を出して、人生を取り戻してほしい」

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200610170080.html