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2006年10月12日(木) 00時00分

生活保護申請 法律家が同行 役所の“水際作戦”横行に歯止め 東京新聞

 収入が乏しく家計が成り立たなくなったとき、最後の支えとなるのが生活保護。その受給申請で役所を訪ねる人に、弁護士や司法書士が付き添うケースが増えてきた。申請窓口では「相談は受けても申請はなかなかさせずに追い返す」といった役所側の“水際作戦”が横行しているのが実態。法律家が同行した場合は行き過ぎた申請拒否はしにくく、新しい「運動」は生活保護の現状を変える力を秘める。 (白井康彦)

 日本弁護士連合会は今月五日、北海道釧路市内で人権擁護大会シンポジウム「現代日本の貧困と生存権保障」を開いた。理詰めの議論が続く中、吉廣慶子弁護士(埼玉弁護士会)の率直な発言に大きな拍手が起こった。

 吉廣さんは昨年九月、四十歳代の夫婦から相談を受けた。夫は病気。妻は夫の介護に追われて就職が難しかった。家賃を八カ月分滞納していた。

 吉廣さんは生活保護の申請をするよう助言。解決に向かうと安心していたが、今年六月になって、夫婦がまだ生活保護を受けていないことを知り驚いた。妻は「生活保護の相談に五回行ったが、『頑張って働け』『自分でどうにかするしかないでしょう』と言われて申請させてくれなかった」と事情を明かした。

 吉廣さんは「これが水際作戦か」と怒りがわいた。妻に就職活動の実績を表にまとめてもらうなどの事前準備をして市役所に同行。担当者はあっさり申請を受け付けた。帰り道、妻は「何度も断られ、家族で心中しようかと話していた」と、ぽろぽろ涙をこぼした。

 「私のような経験の浅い弁護士でも一緒に行くと、窓口の職員は不当な発言をしづらい。弁護士の同行には、水際作戦を阻む効果が間違いなくあると思います」

      ◇

 生活保護は、国が定める最低生活費より収入が少ない人に対して、不足分が支給される仕組み。資産や能力を使い切っているとか、扶養義務者による扶養ができないといったことが前提条件となる。保護費の財源は国や自治体の予算だ。

 国や自治体の財政難を背景に、窓口での水際作戦は根深く定着している。弁護士らは「窓口担当者が『六十五歳までは頑張って働きなさい』『扶養義務者に援助してもらいなさい』『借金があると保護を受けられません』などと言って申請者を追い返すケースが多い」と強調する。

 六十五歳以下でも病気がちだったりして就職できない人はいる。扶養義務者の援助が受けられない状況の人も多い。こうした事情を聞き入れない窓口担当者が少なくないのだという。借金していたら保護が受けられないというルールもない。

 古根村博和司法書士(神奈川県司法書士会)は「窓口は“密室”。申請しようとする人と行政の担当者とで何が話し合われたか外部には分からない」と、水際作戦が横行しやすい事情を話す。

 この密室状況を突き破るのが、申請しようとしている人への同行援助。これまでも、生活保護やホームレスの問題に取り組む法律家・民間団体の会員、地方議員らが同行援助をしていたが、数は限られていた。

 しかし、最近は同行援助に取り組む弁護士や司法書士が増えている。多重債務問題に取り組んできた法律家が目立つ。

 日弁連のシンポジウムは、生活保護問題に取り組んできた弁護士らと多重債務問題に取り組んできた弁護士らが入念に準備。シンポジウムの事前企画のような形で、今年六月末、七月初めには各地の弁護士会が「生活保護110番」を行った。全国青年司法書士協議会も昨年と今年、同様の110番を行った。

 古根村さんは「こうした取り組みの中で、水際作戦のおかしさに気がつき、申請同行を始めた法律家が多い」と話している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20061012/ftu_____kur_____000.shtml