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2006年10月08日(日) 00時00分

ネットバンキング 落とし穴 共有ファイルで個人情報流出 東京新聞

 銀行や郵便貯金などのインターネットバンキング口座に不正アクセスされ、金が奪われた事件の裁判が長野地裁で続いている。事件の始まりは、ファイル交換ソフトを通して流出した個人情報。手軽さや手数料の安さが受けているネットバンキングだが、情報が漏れると不正を見抜けないという弱点も浮き彫りになった。

 (長野支局・太田鉄弥、宇都宮支局・松尾博史)

 ■突然の通知

 「銀行から突然『振り込み完了』のメールが届いた。そんな手続きはしていないのに」。長男(26)名義の口座から突然、金が引き出され、通知を受け取った長野県飯山市の自営業男性(59)は、苦々しそうに振り返った。

 二月一日、八十二銀行のネット口座からほぼ全額の九十五万二千円が別の銀行の口座に送金され、埼玉県のコンビニエンスストアで現金が引き出された。

 逮捕されたのは、埼玉県川口市の無職冨永貢被告(34)=不正アクセス禁止法違反罪などで公判中=ら三人。二日前には石川県珠洲市の男性の郵便貯金口座からも五十三万七千円を奪っていた。ファイル交換ソフト「ライムワイヤー」を使った新しい手口だった。

 被害はさらに広がりそうだ。栃木県真岡市の男性会社員も、みずほ銀行のネット口座から約一千万円を引き出されていたことが分かった。相談を受けた栃木県警の調べで、不正に引き出された金はいったん、複数の口座に送金された後、一部はさらに別の口座を経由して引き出されていた。冨永被告の自宅のパソコンに、名義人本人を装って送金手続きをした形跡が残っていた。同県警は十月中にも冨永被告を不正アクセス禁止法違反容疑で再逮捕する方針だ。

 ネットバンキングは、IDと暗証番号さえ入力すれば、簡単に口座の名義人になりすませる。被害者はいずれも、IDと暗証番号をパソコンのファイルに保存した上、うっかりライムワイヤーで公開する「共有ファイル」にした。それを「銀行」や「ID」の名前が付くファイルを検索し続けていた冨永被告にダウンロードされた。

 ■国境こえて

 ネット犯罪に法律の整備や金融機関の対策が追い付いていない面もある。

 二月に施行された預金者保護法は金融機関に対して、キャッシュカードを偽造され、金を引き出された被害者への補償を義務付けた。しかし、ネットバンキングは補償の対象外。日銀のリポートは「被害が深刻化しないうちに、対策を講じる必要がある」と指摘する。

 ネット犯罪に詳しい岡村久道弁護士(大阪弁護士会)は「ネットは便利だが、その怖さを利用者に知らせることも重要だ」と指摘。さらに「この種の犯罪に国境はない。対策が遅れれば、海外の犯罪グループに狙われる危険性もある」と警鐘を鳴らしている。

<メモ>ファイル交換ソフト 他人のパソコン内にあるファイルをネットを通しダウンロードできるようにするソフト。国内の利用者は推計175万人。日本製の「ウィニー」が主流だったが、米国製のライムワイヤーも急増している。ウイルスに感染したウィニーによる情報の大量流出が社会問題化したが、感染していなくても操作を誤れば、個人情報が流出する危険性がある。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20061008/mng_____kakushin000.shtml