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2006年10月07日(土) 03時03分

<多重債務>うつ病80歳に過剰ローン…呉服3200万円分毎日新聞

 東京の大手呉服販売業者が年金で暮らす埼玉県のうつ病の女性(80)に対し、大手クレジット3社の立て替え払い契約で8年間に96件約3200万円の着物などを売り、女性が多重債務に陥っていたことが分かった。割賦販売法はクレジット会社が顧客の支払い能力を超える過剰与信をしないよう定めているが、消費者金融だけでなく、クレジット業界でも多重債務防止策が機能していない実態が明らかになった。【多重債務取材班】
 代理人の弁護士によると、女性は89年ごろから呉服会社の販売員に展示販売に誘われた。既にうつ病などで通院していたが、98年ごろから物忘れもひどくなる。00年に夫と死別し1人暮らしだ。
 03年、姉に「100万円貸して」と連絡。不審に思った女性の二男が自宅を調べたところ、大量の呉服がみつかった。夫の遺産や預貯金は底をつき、病院に行く金もない。クレジット3社には約350万円の債務があり、販売員が商品購入のために貸し付けた980万円の借用書もあった。
 クレジットによる購入品は96年から03年までの判明分だけで小紋や帯、宝石、バッグなど96点。そのうち9割が未開封で、着物には仕付け糸がついたまま。女性は「販売員に旅行に連れて行ってもらったりして、断りきれなかった」と話し、契約については「いつどこでいくらで買ったか覚えていない」という。
 割賦販売法38条は、クレジット会社が顧客の契約情報を収集する信用情報機関などを利用し、顧客の支払い能力を超える契約を行わないよう定めている。この3社が加盟する信用情報機関最大手の株式会社シー・アイ・シー(CIC)は02年4月以降、加盟社に契約時の全件登録と全件照会を義務づけている。
 女性の代理人の池本誠司弁護士は「全件照会が守られていれば、年金生活者が次々と呉服を買っていると分かるはずなのに、なぜ過剰なローンを組んだのか。CICが何のためにあるのか分からない」と指摘する。これに対し、CIC広報担当は「我々はクレジット会社が顧客を審査するための参考情報を登録しているだけ。何を過剰与信とするのかは、各社が判断すること」と話す。
 女性は04年、呉服会社などに約3200万円の損害賠償を求め、さいたま地裁川越支部に提訴した。多重債務が原因で体調を崩し、しばらく入退院を繰り返していた。
 ◇防止規定に罰則はなく
 クレジット契約では、住宅リフォームや呉服販売など商品を提供する業者の悪質さが指摘されているが、こうした業者と加盟店契約を結ぶクレジット会社の責任も大きい。過剰与信は多重債務急増の大きな要因となっている。
 日本クレジット産業協会の推計によると、クレジット会社の利用額は04年度、40兆円台に乗った。消費者金融の貸出総額の約4倍。一方で全国の消費生活センターに寄せられるクレジット関連の相談は05年度で約14万件にのぼる。ずさんな審査で低収入者が支払い不能な契約を結ばされるケースが後を絶たない。
 割賦販売法の過剰与信の防止規定には罰則がない。消費者金融業界には過剰融資を防ぐために融資上限額のガイドラインがあるが、クレジット業界はこうした基準すら設けていない。経済産業省は法改正の必要性などを含め、昨年から有識者による審議会を続けている。開会中の臨時国会では貸金業の規制強化が審議されているが、多重債務防止のためにはクレジット問題への対策も不可欠だ。
 ▽過剰与信 クレジット(信用)契約で物品やサービスを売買する場合、クレジット会社は顧客に信用を与え、売り手に代金を一括で立て替え払いする。これを「与信」という。この際、クレジット会社は個人の債務データなどを管理する個人信用情報機関にデータを照会、審査するが、ここで顧客の返済能力を超えた契約を結ぶと「過剰与信」となる。
(毎日新聞) - 10月7日3時3分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061007-00000013-mai-soci