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2006年10月05日(木) 00時00分

【関連】『看過できぬ不平等』 『合憲』判事も警鐘 東京新聞

 「到底看過できない、投票価値の著しい不平等状態を生じさせている」「国会のさらなる努力に期待する」−。国会の定数是正努力に一定の評価を与えた四日の最高裁大法廷判決。しかし、合憲とした裁判官の中にも、現状を問題視する意見が目立った。反対意見を述べた五人のうち二人は「格差二倍以上は違憲」と言い切っており、抜本的な是正を怠ってきた国会にあらためてボールが投げられた。 

 五・〇六倍の格差を九対六で辛うじて合憲とした二〇〇四年一月の大法廷判決。「このままでは違憲」とにおわす厳しい判断を受けて、参院は翌月、各会派代表者懇談会で定数是正に向けた協議を開始した。しかし「半年で改正するのは困難」として、七月の参院選での是正は見送った。

 選挙後、格差が大きい選挙区の定数を調整する「四増四減」案から「十四増十四減」案を検討。議員一人当たりの人口が最も少ない鳥取県選挙区を島根県選挙区と「合区」する案も出た。

 しかし、最終的には今年六月、「四増四減」とした改正公職選挙法が成立。最大格差は四・八四倍(大阪−鳥取)に縮小したものの、抜本解決にはならなかった。改正に携わった阿部正俊参院議員(自民)は「ベストとは思わないが、『漫然と放置した』と言われないだけの最小限の改正はした」と認める。

 こうした是正を評価する裁判官もいたが、多くは批判的だ。検事出身の甲斐中辰夫裁判官は「立法当初の選挙区間の格差からあまりにもかけ離れた」と現状を批判。「到底看過できない不平等状態」と述べた。

 判事出身の今井功裁判官も「国会の格差是正のためのさらなる努力に期待する」と、条件付きの合憲だと示唆した。

 反対意見を述べた裁判官はさらに手厳しい。弁護士出身の滝井繁男裁判官は「衆院でも比例代表制が導入され、高い見識を持つ人を集めるという参院の独自性が希薄化したにもかかわらず、国会で議論の形跡はない」と参院の怠慢を批判した。

 判事出身の泉徳治裁判官は「東京都選挙区を基準にすると、投票価値が二倍以上の選挙区が三十一も存在し、総人口の37%が実質的に二票以上を与えられていたことになる。民主主義体制の根幹を揺るがし、憲法違反が明らかだ」と述べた。

■選挙のたび裁判

 最高裁が参院選の定数配分訴訟で最初に判決を出したのは一九六四年、今回の訴訟でも原告となった越山康弁護士(73)が起こした訴訟だった。当時、原告側が問題とした一票の格差は四・〇九倍。大法廷は「議員定数は平等の原則から人口比例が望ましいが、選挙区により不均衡があっても立法裁量の範囲内」と述べ、合憲判断を示した。

 参院定数訴訟は選挙のたびに起こされた。最高裁は八三年四月の大法廷判決で、七七年の参院選について(1)投票価値の著しい不平等があるか(2)不平等状態を相当期間、放置したか−という判断基準を初めて提示。八〇年以降の定数配分は、直近の二〇〇一年参院選の大法廷判決まで合憲とされてきた。

 ただ最高裁は、この間にあった一票の格差が最大六・五九倍となった九二年の参院選について、原告の訴えは退けたが、「違憲の問題が生じる程度の投票価値の著しい不平等な状態」と認定。一票の格差の限度は六倍程度と受け止められた。

 上告棄却が続く中、原告団が「山が動いた」と表現したのは、〇一年参院選をめぐる大法廷判決(二〇〇四年一月)。合憲とする多数意見に加わった四人が「漫然と今の状況が維持されたら、違憲とする余地は十分にある」と警告したためだ。

 この判決では、裁判官出身の判事が初めて反対意見に加わった点でも注目された。「国会は投票価値の不平等を放置し、ゆがんだ形での選挙制度を温存することで、現職に有利な体制を維持している」と厳しく批判した判事もいた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20061005/mng_____sya_____008.shtml