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2006年10月03日(火) 00時00分

日比谷公園人模様24時 体をきたえる「日比谷クラブ」の人たち。上半身裸になる人が多い 東京新聞

 日比谷公園(東京都千代田区)。大企業や官公庁に囲まれたおなじみの公園だ。そこには、実にさまざまな人たちが集まってくる。本社の日比谷移転を機に、お隣にある大都会のオアシスの二十四時間を追ってみた。

 公園の夜明けは静かだ。午前六時。耳を澄ませば小鳥やカラスの鳴き声が聞こえてくる。公園内をジョギングしている男性がいた。「このまま皇居の方へ走ってから出勤するんですよ」。日比谷公園周辺はジョギング族が多い。

 イチョウ並木の一角に鉄棒とつり輪がある。午前七時半ごろから、三十−六十代の男性たちが次々と現れた。十人ほどが、それぞれ背広などを脱ぎシャツ一枚に。鉄棒で大車輪を披露したり、つり輪で宙を舞ったり。まるでサーカスのよう。「日比谷クラブ」と呼ばれる人たちだ。

 四十年近くも通っているという海老原格さん(63)は、厚生労働省を退職後、大学客員教授を務める。「僕もここで鉄棒をしている人を見て始めたんでねえ。戦前からあったんじゃないの」。団体として活動しているのではなく、勝手に体操を楽しむ。今では外国人や女性もいる。

 心字池と雲形池。皇居が近いせいか、サギなどの鳥が舞い降りる。雲形池には、草魚とみられる体長一メートル近くの魚がゆったりと遊泳していた。丸々とした野良猫たちも。

 老舗レストラン「松本楼」で小坂哲瑯社長(74)は「昔に比べると虫が少なくなったかな。子どものころは、窓から景色が見えないほどトンボでいっぱいになった」と懐かしそうに話した。

 正午すぎ。ベンチは近くの企業や官公庁から出てきた男女で、あっという間に埋まる。「花や緑が多い」「駅や会社から近い」。公園に集まる理由はさまざま。ギターの弾き語りをしている男性も。ベンチで休む(サボる)人も増えてきた。

 生花店「日比谷花壇」は、安倍内閣発足でお祝いのコチョウランの出荷に追われていた。戦後復興の一環として一九五〇(昭和二十五)年公園に出店。「会社帰りの人も寄ってくれる。公園にあるメリットは大きい」と店員佐藤智章さん(41)。

 一九一〇(明治四十三)年に建てられた旧資料館(旧公園管理事務所)が今月一日、結婚式などを開く多目的ホールとして生まれ変わった。運営する「ワタベウェディング」の広報担当、青木幸子さん(33)は「四十人ほどの、小さな結婚式をしたい方にはぴったり。都の文化財なので、雰囲気がありますよ」と話す。

 「ヤオン」といえば、それは日比谷野外大音楽堂のこと。若手ミュージシャンにとって、あこがれのステージ。数々の伝説的コンサートが開かれてきた。よく来るという女性は「会場全体が一体になって体を動かせるので最高です」。

 すぐ隣には都立日比谷図書館。都心で手軽に利用できる図書館として人気が高い。ジャーナリスト樋口満さん(66)は、かつては日比谷公会堂内に本社機能のあった時事通信社に勤めていた。「学生時代も通ったし、思い入れがある。全国の新聞を読めるんですよ」と教えてくれた。図書館で新聞を閲覧しているというホームレス男性(54)は「まず最初に読むのは天気予報だよ。雨の日は大変だからさ」。

 午後四時半ごろ、イチョウ並木のベンチに座った女性がいた。赤いジャケットにグレーのスパッツ。濃いアイシャドー。みんなから「ピンクパンサー」と呼ばれている。六十五歳という。「家はないけど、踊りを見せてほしいという人からお金をもらっているので、生活に不自由はないわ。困ったら仲間が弁当をくれるしね」と意気軒高だ。

 秋の午後はあっという間にたそがれる。帰途に就くサラリーマン、手をつなぐカップルたち。午後六時をすぎるころには、ライトアップされた。カップルの横でトランペットの練習をしている男性もいた。

 日比谷公園は二十四時間出入り自由。それでも午前一時を回って、終電の時間をすぎるようになるとようやく静かになってきた。そしてまた、公園に朝が来て、さまざまな「物語」が交錯する。

 日比谷公園 1903(明治36)年6月、日本初のドイツ式洋風近代公園として開園。幕末まで大名屋敷だったが、明治になって陸軍練兵場に。面積約16万平方メートル。日比谷焼き討ち事件、社会党委員長刺殺事件などの歴史の舞台にもなった。2つの大きな花壇があり、四季折々の緑が人々の目を楽しませる。

 文・山田雄一郎、井上靖史/写真・池田千恵子、梅田竜一

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