悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年10月02日(月) 00時00分

農産物の安全性保証 欧州で普及『GAP』 東京新聞

 徹底したリスク管理で農産物の安全性を保証する仕組みづくりが、農家の有志や流通業者らの手で進められている。ヨーロッパで普及しているGAP(適正農業規範)の日本版だ。食への安全意識の高まりや、国の農産物輸出の奨励も背景にある。GAPとはいったいどんな仕組みなのか。 (坂口千夏)

 農産物の品質管理は、農薬や肥料の使用基準だけにとどまらない。例えば「水源は確かなものか」「肥料と農作物、種苗の置き場は相互汚染がないよう配慮しているか」「収穫後の洗浄や出荷作業中の衛生管理をどうするか」−など、さまざまな検討項目がある。

 農家が生産の現場でリスクが発生しやすいポイントを整理し、段階ごとに対策をとる手法がGAP。工業分野で定着した国際標準化機構(ISO)の農業版のようなものだ。

 現行のトレーサビリティー(追跡可能性)は、生産や流通の各段階のルートを明らかにすることで、食の安全性を間接的に保証する。GAPは生産現場に厳しい規範を課すことで、具体的なリスクを最大限排除し、農産物そのものの安全性を証明する。GAPで各種のデータ管理を徹底すれば、食中毒などの事件が起きた場合も農場のどこに原因があるかをいち早くつかめる。

 GAPはすでに欧州を中心にチリ、中国、韓国などでも取り入れられている。第三者組織が現地で審査し、一定の基準を満たした農家には認定証を与える仕組み。欧州では、民間非営利団体が運営するユーレップギャップ(EGAP)認証を農産物取引の条件とする小売店が多く、実質的な国際基準になっている。

 一九九九年から商社を介せずに直接、英国にリンゴを輸出している片山りんご株式会社(青森県弘前市)は、〇四年に日本で初めてEGAPの認証を取得した。検査項目は、農薬の管理からトイレの手洗いの状態まで約二百六十。執行役の片山寿伸さん(46)は「日本の一般の農家なら、日々の農作業の中で当たり前に行っていること。決してハードルは高くない」と話す。

 だが、EGAPは、取得時に数十万円の費用がかかり、取得後も毎年一回、抜き打ち審査があるなど農家にとって負担は大きい。日本で対応を迫られるのは当面、GAPがある国へ輸出する生産者に限られそうだ。

 一方で、EGAPとの相互認証を進めている中国など、世界各国でGAP確立に向けての動きが出ている。片山さんは「海外からGAP農産物がなだれ込んで来たとき、日本の生産者は今のままで対抗できるでしょうか。もし、他国がGAP農産物は欧州向けに回し、基準に外れたものは日本に輸出するということになったら、日本の消費者はどうなるのでしょうか」と恐れを口にする。

 国産、輸入品を問わずに適用されるGAPは、価格競争力が強いだけの一部の農産物が無制限に輸入される事態に歯止めをかける役割もする。片山さんは、「日本にも全国統一基準のGAPが必要です」と訴える。

 農林水産省は二〇〇四年に「生鮮農産物安全性確保対策事業」を打ち出し、全国的にGAPの手法を推奨し始めた。鹿児島県はGAPの理念を取り入れた独自の農林水産物認証制度を始めている。大手スーパーのイオンや生協なども小売り・流通業の立場から、仕入れ先の生産者に対しGAP的手法の導入を求めている。

 農業生産者らでつくる日本GAP協会(本部東京)は、農薬の使用状況や廃棄物の管理、従業員の安全環境整備など約百六十項目を審査する日本版GAPを作成し、四月にインターネットのホームページで内容を公開。九月にはEGAPとの相互認証を申請した。

 GAPの導入は、消費者にとってより安全性の高い食品が食卓にあがることにつながる。ただし、本格導入には時間もかかる上、農家だけに過重な負担がかからないような支援も必要だ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20061002/ftu_____kur_____001.shtml