悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年10月01日(日) 13時02分

会いたい聞きたい:多重債務者問題に取り組む、青山定聖弁護士 /熊本毎日新聞

 ◇「上限金利引き下げを」−−青山定聖弁護士(55)
 多重債務者問題を巡り、昨年ごろから最高裁で貸金業者の高金利を可能にしているグレーゾーン金利を「無効」とする判決が相次いでいる。政府・与党の見直し議論も活発になってきた。9月に入り、金融庁と自民党政務調査会が「貸金業法の抜本改正」の骨子案を提示したが、いずれも消費者問題に関心の高い全国の弁護士や司法書士から批判を浴びている。問題点を多重債務者問題に詳しい青山定聖弁護士に聞いた。【高橋克哉】
 ——積極的に消費者金融や日掛け金融業者を告発していますが、多重債務者を取り巻く環境に変化はありますか。
 ◆県内の登録日掛け業者は97年3月に100社あったのが、今年8月には25社まで減っています。継続的な告発行動がある程度実を結んだと言えるでしょう。しかし、残念ながら相談件数は減っていません。
 ——理由は。
 ◆一概にはいえませんが、大きな理由の一つに貸金業者の貸し出し金利が高すぎることが挙げられます。バブル経済の崩壊で、銀行金利は空前の低金利が続いている。本来は借りやすくなければならないのに、銀行は貸し渋り、資金調達が出来ない人々が増えた。一方、貸金業者の金利は出資法の年29・2%。この15年で段階的に引き下げられたとはいえ、市中金利と比べれば法外な高金利です。
 ——年29・2%の金利だと完済は難しい?
 ◆消費者金融白書によると、借り手の平均借入額は145万円。税理士の計算では、年29・2%の利息で150万円借りると月々4万円の返済で完済までに8年9カ月もかかります。この間の支払い総額は約403万円にも上る。
 毎月の支払額が3万円だと、利息だけで月3万6500円ですから、永久に完済できません。返しきれないから、他から借りて、雪だるま式に借金が増えて多重債務者となってしまう。
 ——9月に入って、金融庁と自民党が、貸金業法改正案を打ち出しました。
 ◆金融庁案は出資法の上限金利を15〜20%に引き下げる消費者金融の規制強化を示しましたが、少額・短期の貸し付けには5年間、年28%の金利を認めています。
 その後に出た自民党案では、法改正から3年間を「準備期間」として今の金利体系が続きます。その後金利は20%に下がりますが、特例としてさらに2年間は「30万円、1年以内の貸し付け」の条件で年25・5%までの金利が残る。いずれも多重債務の原因となっている高金利が5年間残ってしまうので意味がありません。
 ——今後も徹底的に「例外なきグレーゾーンの撤廃」を求めていく、ということですね。
 ◆グレーゾーンを無くすのはもちろんですが、引き下げ後の基準(利息制限法の上限。年15〜20%)でもまだ高金利だと考えます。
 ——なぜですか。
 ◆明治時代の旧利息制限法も、1954年制定の現行の利息制限法も、借り手の多くである社会的弱者の保護を目的に、社会情勢や銀行の金利などを勘案して「弱者でも返済可能な範囲」として上限金利を定めています。
 1954年当時の銀行の貸出金利は約9%です。現行の利息制限法はこの基準に基づいているもので、現在市中金利が2%を下回る時代なのだから、本来ならば、利息制限法の上限も5分の1程度にまで引き下げるべきなのです。せめて消費者契約の基本法である消費者契約法の遅延損害金の上限金利(14・6%)にまで引き下げるべきだと思いますね。
………………………………………………………………………………………………………
 ◇プロフィル
 1951年、熊本市に生まれる。熊本高、防衛大を経て、中大法学部を卒業。85年に司法試験に合格し、88年弁護士登録。91年9月に独立し、熊本市に「青山法律事務所」を開設した。現在「保証料・日掛け被害対策全国会議」事務局長、熊本多重債務対策協議会事務局長などを務める。

10月1日朝刊
(毎日新聞) - 10月1日13時2分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061001-00000158-mailo-l43