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2006年09月30日(土) 01時33分

実名・匿名問題など議論…マスコミ倫理懇全国大会読売新聞

 「問い直そう!メディアの価値と役割」をテーマに山形市で開かれていたマスコミ倫理懇談会全国協議会の第50回全国大会は、29日、全体会議が行われ、「言論・表現の自由を制限しようとする動きに反対する一方、自らの足元を見つめ直し、メディアとしての高い倫理観を目指す」との大会申し合わせを採択、2日間の日程を終えた。

 報道分科会では、容疑者や被害者の実名・匿名問題や、メディアスクラム(集団的過熱取材)などが議論された。

 ◆容疑者、被害者の実名・匿名問題◆

 山口県周南市の徳山工業高等専門学校の女子学生殺害事件で、自殺した容疑者の少年(当時19歳)を実名で報じるか各社の判断が分かれた点について討議された。

 実名報道した読売新聞など3社の出席者は判断の理由として、〈1〉事件報道は実名が原則で、死亡によって更生・保護を目的とした少年法の規定を適用する意味が失われた〈2〉死刑を科すことができる18歳以上の年長少年〈3〉社会的反響の大きさ——などを挙げた。一方、匿名とした各社からは「少年に釈明の機会がなくなった」などの意見が出たが、複数の社では「社内でも議論があった」とし、微妙な判断だったことをうかがわせた。

 被害者の実名問題についても、広島市の女児殺害事件などを例に、性的暴行があった場合の対応の難しさについて意見交換。「なぜ実名が大原則なのか、被害者を含む読者らに、理解を求めていく努力が必要」との見解が出された。

 ◆メディアスクラム◆

 秋田県藤里町の連続児童殺人事件では、多数の報道陣が詰めかけたことで、遺族や行政の報道自粛の要請を受け、各社が取材を自主規制せざるを得なくなった。時事通信秋田支局長らがその経緯を報告、「結果的に自分たちの行動で自分の首を絞める結果になってしまった」と述べ、メディアスクラムが、取材者側に大きなデメリットにもなる実態を指摘した。

 また、読売新聞東京本社社会部長は「メディアスクラムによって我々の信頼が損なわれ、マスコミを規制しようという動きを招いてしまっている」とした上で、「報道の自由を守るためにも、過熱取材が予想される事件では、あらかじめ取材陣の数を絞り込む『事前規制』も課題だ」と提案した。

 ◆匿名社会◆

 山形放送報道部長が、昨年12月に山形県庄内町で発生したJR羽越線の脱線事故で、県が病院に「負傷者情報の公表は本人の了承を得てから」と求めるファクスを送り、それまで報道関係者向けに情報を提供していた病院もいったん提供をやめてしまった例を報告。報道で初めて肉親の死を知った遺族もいたといい、被害者情報の報道の重要性を訴えた。

 読売新聞東京本社の社会部記者も、行政機関個人情報保護法が昨年4月に全面施行されて以降、省庁の人事異動時に、過去の所属部署の公表さえ本人同意を必要とするところも出てくるなど、透明性が後退している現状を報告。ある地方紙幹部は、「匿名化の流れは、小さな事故や火災の発表まで、すそ野が広がっている。新しいルールが作られる前に流れを阻止する必要がある」と述べた。

          ◇

 このほか、既存のマスメディアとネットの共存の可能性が討議され、ネット情報は膨大で有効だが、信頼性から既存メディアの優位は揺るがないとの意見が相次いだ。読者との関係構築には、ブログ(日記形式の簡易ホームページ)が有効との声もあった。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060929icw2.htm