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2006年09月28日(木) 11時45分

お産の事故に「保険」創設 産科医不足解消へ厚労省検討朝日新聞

 厚生労働省は、出産に伴う医療事故の被害者を救済する制度の創設に乗り出した。「無過失補償制度」といい、産科医の過失が認められなくても、障害を負った赤ちゃんや親に補償金が支払われる「保険」だ。過酷な勤務や訴訟リスクなどから進む深刻な産科医不足を解消する狙いもある。日本医師会も制度導入を訴えているが、補償の財源をめぐる考え方に同省と日医との間に隔たりがあり、実現までには曲折もありそうだ。

 日医によると、出産時には脳性まひが500件に1件の割合で発生。医師の過失が認定されると賠償額が数億円に及ぶこともあり、産科医のなり手が不足する一因と言われている。最高裁のまとめでは、産婦人科医1000人あたりの04年度の医療事故訴訟件数は11.8件。次に多い外科は9.8件、内科の3.7件などと比べ圧倒的に多い。

 厚労省によると、医療機関に勤める医師の数は毎年3、4千人増えているが、産科と産婦人科の医師数(04年)は約1万600人で、10年前に比べ約800人減った。

 そこで、厚労省は、産科医不足解消の「切り札」として、補償制度を創設を目指すことにした。年内に制度の大枠をつくる方針で、自民党と協議に入った。

 この制度では、日医が8月、国に先駆けて独自案を作成した。体重2200グラム以上、34週以上で生まれ、出産時の脳性まひで障害1〜2級と診断された赤ちゃんを救済。生後5年までに一時金2000万円を支払い、その後の介護費用などを年金形式で支給する内容。財源は、脳性まひの発生数などから年間60億円が必要になると算定。公費支出がなければ制度維持は不可能としている。

 木下勝之・常任理事は「安全なお産の環境を整える少子化対策でもあり、公的支援は当然だ」と話している。

 これに対し、厚労省は公費支出には否定的だ。「医療行為はあくまで医師と患者との民間契約」(同省幹部)との立場で、医療機関中心の負担を検討している。

 このほか、救済対象を重度の脳性まひに限定するのか、制度運営をだれに任せるのか、他の障害者への補償制度とのすみ分けなどを詰めている。

 厚労省研究班の04年度の試算によると、救済対象を軽症の脳性まひまで広げ、民事訴訟の補償額を参考に算定すると、必要な財源は年間約360億円。産科医が出産1件につき2万円の掛け金を負担し約220億円を工面、残り約140億円を公的補助などでまかなえば運営できる。

 研究班の岡井崇・昭和大教授(産婦人科学)は「きちんとした制度をつくらないと、絵に描いた餅になり、元通り民事訴訟による解決に頼らざるを得なくなってしまう」として、性急な制度創設の動きを批判。慎重な議論が必要だと訴えている。

http://www.asahi.com/life/update/0928/005.html