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2006年09月26日(火) 16時34分

奈良小1女児誘拐殺人 小林被告に死刑 奈良地裁判決 被害1人でも厳罰産経新聞

 平成16年11月に起きた奈良小1女児誘拐殺人事件で、殺人やわいせつ目的誘拐など8つの罪に問われ、死刑を求刑された元新聞販売店員、小林薫被告(37)に対する判決公判が26日、奈良地裁で開かれた。奥田哲也裁判長は「被害者が1人であることは死刑を回避する理由にはならない。真摯な反省をしていない上に更生の意欲もなく、人格の矯正可能性は極めて低い」として、死刑を言い渡した。弁護側は即日控訴した。

 子供を狙った犯罪が全国で続発するなか、被害者が1人の殺人事件に対する死刑選択の適否が最大の争点。地裁の判断は、従来の量刑基準より、凶悪犯罪に対する厳罰化の傾向に沿ったものとなった。

 奥田裁判長は冒頭、「検察官の求刑にかんがみ、主文を後回しにします」と述べた。その後、殺人や強制わいせつ致死、わいせつ目的誘拐など8つの起訴事実を順次、認定。殺意について「突発的、衝動的なもの」とした弁護側の主張についても退けた。

 続く量刑理由で、「永山基準」が示す各条件について検討。「被告のことを素直に信じた被害女児の純真無垢な性格を利用した巧妙な犯行。女児への異常な性欲を満たすための犯行動機にも酌量の余地はない」と断罪した。

 さらに、遺族の被害感情について、「極刑以上の刑にしてほしいと心情を吐露するなど、処罰感情は峻烈を極めている」と指摘。被告の2度にわたる性犯罪の前科にも触れ、「長期にわたる矯正教育を受けたにもかかわらず本件犯行に及んでおり、この種の犯罪への常習性は相当に根深いものがある」と述べた。

 こうした犯罪傾向の強さから、更生の可能性について「現段階では人間らしい感情は希薄で、もはや30代後半である被告が更生することは極めて困難」と言及した。

 その上で、死刑適用の是非を判断。「被害女児に落ち度はなく、性的被害にもあっている。被害者の数だけをもって死刑を回避すべきではない」とし、「被告自身の生命をもって償わせるほかない」と結論付けた。

 判決によると、小林被告は平成16年11月17日午後、奈良市内の路上で帰宅途中の市立富雄北小1年、有山楓(かえで)ちゃん=当時(7)=に声をかけ、車に乗せて誘拐。奈良県三郷町の自宅マンション浴室で殺害した後、同県平群町の道路脇側溝に遺体を遺棄するなどした。

 小林被告は殺害から約1カ月半後の同年12月30日に逮捕。女児に対する強制わいせつ罪などの前科があったことから、国が性犯罪の再犯防止策を検討する契機となった。

                    ◇

【視点】

 ■「明確な前科」際立った悪質性

 「被害者の数だけをもって死刑を回避すべきだとはいえない」。凶悪犯罪に対する司法判断が厳罰化するなか、小林薫被告に奈良地裁が極刑を選択したのは、犯行の残忍性や無反省な態度、更生意欲のなさなどを重視した結果といえよう。

 起訴事実にほぼ争いがなく、判決の焦点は死刑適用の判断指針「永山基準」に照らし、殺害された被害者が1人でも死刑が選択されるか否かの一点に尽きた。

 同じ小1女児が犠牲となった広島市の女児殺害事件で広島地裁は、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(34)に無期懲役を言い渡した。被害者が1人の事案で死刑を選択するケースとして、「他の量刑要素においてより悪質性の高い事案」との判断を示し、衝動的犯行の疑いがぬぐえないこと、前科が立証できないことを勘案、死刑を回避した。

 奈良事件と広島事件の最大の違いは、小林被告が、過去に女児に対するわいせつ事件で2度有罪判決を受けているという「明確な前科」があったことだ。8つの起訴事実の中に、事件のわずか約2カ月前に起こした別の女児に対する強制わいせつ罪が含まれていたことも悪質性を際立たせた。

 判決は、小林被告が過去の服役でも「更生への自覚がなかった」と認め、公判での言動などと重ね合わせて、「その人格を矯正し、更生することは極めて困難」と断じた。

 小林被告は、公判廷でも反省の態度を示さず、遺族感情を逆なでするような供述を繰り返した。7歳の子供の命を奪ったことに対する罪は、いかに重いか。判決は、その“原点”を如実に示す結果といえるだろう。

 弁護側は即日控訴したが、児童連続殺傷事件の宅間守元死刑囚(執行)のように、過去には同様に死刑を言い渡された被告が自ら控訴を取り下げた例もある。公判で「早く死刑を」と訴えた小林被告自身の判断も注目される。(永田岳彦)

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【用語解説】永山基準

 昭和58年7月、最高裁が連続4人射殺事件の永山則夫元死刑囚(平成9年執行)の判決で示した死刑適用の判断基準。犯行の動機や悪質性、殺害された被害者の数、遺族感情、前科など9項目を勘案材料として挙げ、現在も死刑適用の指針となっている。今年7月の広島小1女児殺害事件の広島地裁判決では、この基準に照らし、被害者が1人▽母国での前科を認めるに足りる証拠がない−として無期懲役が言い渡された。
(産経新聞) - 9月26日16時34分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060926-00000013-san-soci