悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年09月22日(金) 00時00分

処分の現場 波紋 都教委通達「違憲」判決朝日新聞

 「元気が出る判決だ」「管理職と教員との亀裂がさらに大きくなると困る」。卒業式、入学式で国旗に向かっての起立や国歌斉唱を拒否するなどした都立校教員への大量処分をめぐり、都教育委員会の通達を「違憲・違法」と結論づけた21日の東京地裁判決。学校現場など関係者に、さまざまな波紋が広がった。

 判決を聞いた市部の中学校の女性教諭は「元気が出る判決です」と声をうわずらせた。都教委が通達を出した03年は23区の都立高に勤務。卒業式では都教委の担当者が、日の丸のある正面でなく横を向いていた教員を後ろでチェックするのを見ていた。

 教育は不当な支配に屈することなく行われるべきだとする教育基本法に違反していると思った。「2期制の導入やエリート高校づくりなど、都教委の押しつけがひどくなるなかで、まだ望みがあるなと感じた」

 この日、千代田区永田町であった原告側の報告集会。知人が原告の一人という男性会社員(59)は「まさか勝てるとは。石原都政の日の丸、君が代問題への対応は、常軌を逸している。石原都知事も都教委も大いに議論してほしい」と話した。

 会場に駆けつけた50代の定時制高校の男性教諭は、卒業式で起立せず、過去に2回処分を受けたという。「画期的で、信じられない。個人の思想を強制することは承服しがたい。都教委にはうんと反省してほしい」

 一方、ある都立高の副校長は「教育活動を円滑に進めるうえで、混乱を引き起こしかねない判決だ」と受け止める。「通達は法令に準ずる重いもので、思想信条と無関係に遂行しないといけない。不起立者をヒーロー扱いすべきではない」と話す。「司法判断は最高裁まで確定しないだろう。原告側は今浮かれても仕方ないのではないか」

 「判決によって、現場がこれ以上振り回されるのは困る」というのは区立中学校長だ。「思想信条の自由を大切にした判決は筋だと思う。だが、国旗・国歌絡みで教育委員会の指導を徹底させなければならない管理職と、反対する教員との間の亀裂がこれ以上大きくなってほしくない。それが本音だ」

 また、共産党都議団は「都教委と石原知事は判決を厳粛に受け入れ、控訴することなく、違法な通達・処分を直ちに撤回するとともに、関係者に深く謝罪すべきだ」とコメントを発表した。

◆石原知事の発言◆

 石原慎太郎知事は、03年10月の都教委通達や日の丸・君が代の学校での扱いを巡り、これまでに自身の考えを繰り返し述べている。

 原告団が提訴した04年1月30日、都庁で行われた定例会見。「彼ら(原告)が国歌・国旗をなぜ忌避するかということの具体的な理由がいまだによくわからない。強制されるのはだれもみな嫌なものかもしれないけれども、国歌・国旗というものを保有しない国家というのは私は聞いたことがないし、そういうものの象徴的な存在が、国家という共同体に属している人たちのエネルギーを喚起もする」。さらに、「教育委員会としたら、ごく妥当な要望だと思いますけどね」とも。

 この年の都立校の卒業式が終わった3月下旬の会見では「教育者として、国なり都なりが決めたルールってものは順守してもらわないと。守るということそのものが教育になるんだからね」と話した。

 だがその後、発言の内容が微妙に変化したようにも映る。

 04年10月の園遊会。天皇陛下は「日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と話しかけた米長邦雄・都教育委員に対し、「やはり、強制になるということではないことが望ましい」と述べた。

 この感想を問われた知事は、やりとりの細かいニュアンスがわからないと断ったうえで、「(都教委の方針は)強制じゃないんですよ。要するに国が決めたことを、公務員として、義務として行うか行わないかの問題であってね。一般的に強制する、しないの問題とはこれまた違う。そこは今後、混同しないでもらいたい」。

 今年4月には、公立学校長が出席した都教委の教育施策連絡会でのあいさつで、教育基本法改正の動きに触れて「国に対する本当の愛着が生まれる教育をしていない。歴史の教育が間違っている」「『必ず入学式で日の丸掲げて君が代歌え』って、それはそれで必要だが、一つの手がかりで、本質はそんなことではない」と語った。

◆都教委の通達をめぐる動き◆

03年10月 都教委が国旗掲揚と国歌斉唱の実施指針を都立学校長に通達
04年 1月 指針に反対する教職員228人が提訴。以後、3度の追加提訴
    3月 通達後初の卒業式。都教委が監視役の職員を各都立高などに派遣
       都立板橋高の卒業式で、元教諭が指針に対する反対活動
    4月 卒業式で不起立だった教職員に初の処分
    同月 処分を受けた教職員が「被処分者の会」を結成
    5月 都教委が、生徒が不起立・不参加だった担任教諭に厳重注意
    6月 都教育長が生徒の起立・斉唱への指導を職務命令にする方針を表明
    8月 処分を受けた教職員を対象にした「再発防止研修」。欠席した教諭を減給
05年 5月 入学式で不起立だった中学校教諭に初の停職処分
06年 5月 東京地裁判決で板橋高の元教諭に罰金。元教諭は控訴

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000609220001