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2006年09月21日(木) 21時08分

聴き放題の「ナップスター」が今秋登場——洋楽が中心で、ドコモ携帯へ配信見込む読売新聞


定額制で聴き放題が売りのアメリカNapsterのサイト。http://www.napster.com/

 アップルコンピュータの「i Tunes Music Store」(iTMS)が席巻する日本の音楽配信市場に、「聴き放題」をうたい文句にしたアメリカ生まれの配信サービス「Napster」が今秋、殴り込みをかける。Jポップなど邦楽のラインアップに苦戦するものの、完全定額制を武器に洋楽需要の掘り起こしも狙っている。

レコード会社との交渉難航

「Napster」の日本進出が明らかにされたのは、昨年8月のこと。日本の音楽小売り大手のタワーレコードとアメリカNapsterが同年10月に合弁でナップスタージャパンを設立し、今春からのサービス開始を目指していた。

 しかし、5月になってサービス開始を秋口に延期することを発表した。その理由について「楽曲コンテンツやさまざまなプログラムなどサービスの充実に万全を期し」としている。奥歯に物の挟まった言い方だが、事情を斟酌すると、楽曲の提供について日本のレコード会社との間で合意ができていないことがうかがわれるのだ。

 03年11月にアメリカでサービスを開始し、イギリス、カナダ、ドイツに進出したNapster。満を持しての日本上陸となったが、サービス開始までは、どうも「いばらの道」のようなのだ。

 タワーレコードの谷河立朗コーポレートコミュニケーション統括部長は、各レコード会社との楽曲配信の契約状況について「まだ最終的な段階に至っていません」と事情を明かす。「恥ずかしくない楽曲のラインアップを数多くそろえたいために、スタート時期を今秋に延ばしたのです。(レコード会社と)すべての契約が終わってはいませんが、見通しはかなり明るくなってきています」(谷河さん)。

 具体的なサービス内容はどうなのか。150万曲を準備しているが、サービス開始時は、「間違いなく洋楽の方が多くなる」という(谷河さん)。レコード会社との交渉が難航し、邦楽のラインアップでは苦戦を強いられているからだ。

 ただ、そのほかは欧米と同様のサービスになる。つまり、(1)登録されている楽曲は定額で聴き放題、(2)音楽再生用のプレーヤーに自由に楽曲を転送できる「ToGo」サービスを用意などだ。日本ではタワーレコードの親会社、NTTドコモの携帯電話「F902iS」や東芝の「gigabeat S」など、WMA形式の音声ファイルを再生可能な携帯プレーヤーに転送、コピーできる。

定額で若者の取り込み狙う

 課金方式だが、先行するアップルコンピュータのiTMSや携帯電話向けの「着うたフル」(au)などの配信サービスは、1曲ずつ購入する従量制である。一方、Napsterが採用するサブスクリプション方式は、日本ではほとんどなじみがない。ただし、楽曲は定額料金で無制限にダウンロードできる。それだけに、たくさんの曲を聴きたい利用者にはアピールするはずだ。

「音楽ケータイ」ではauに大幅な後れを取っているNTTドコモとしても、10月からスタートする番号ポータビリティー制導入を前に、“孫会社”ナップスタージャパンの定額サービスで、音楽好きの若者層を取り込むことを狙う。目標とするユーザー獲得数は、サービス開始3年で100万人だ。

「タワーレコードにはコアなファンがたくさんいますし、音楽フリーペーパーの『bounce』のように活字による情報も提供してきました。これらを生かせば勝算がないわけではありません。“聴き放題”でたくさんの曲に触れてもらいCD購入につながれば、業界全体、タワーレコードの実店舗ともどもにメリットは大きいはず」と谷河さん。

 元々タワーレコードはマニアックな洋楽の輸入盤ショップとしてスタートした。邦楽中心の日本の音楽産業で、洋楽中心のNapsterがスタートすれば、洋楽需要の掘り起こしにつながるかもしれない。今後の展開が期待される。(津田大介、IT・音楽ジャーナリスト/2006年8月24日発売「YOMIURI PC」10月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20060920nt02.htm