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2006年09月19日(火) 00時00分

『吉牛』完全復活険し? 調達量は3割程度 輸入価格も大幅高 東京新聞

 吉野家ディー・アンド・シーが十八日、二年七カ月ぶりに牛丼の販売を再開。この日に用意した百万食は、早々と売り切れる店が続出し、牛丼人気の健在ぶりを示した。しかし、米国産牛肉の不足からしばらく限定販売が続くほか、コスト高で値段も以前より百円(並盛り)高い。牛丼“復活”を機に、吉野家は再び成長戦略を描くことができるのだろうか。 (経済部・荒間一弘)

 ◆成長戦略

 「牛丼を提供できるうれしさを実感できた」−。この日午前、東京都千代田区の有楽町店で記者会見した安部修仁社長は、多くのマスコミを前に喜びを語った。

 他社が豪州産などを使って牛丼を復活させる中、「従来の味」にこだわり、かたくなに米国産にこだわってきた吉野家。結果的に二〇〇五年二月期は二十四年ぶりの最終赤字となるなど苦汁をなめてきた。

 こうした逆境の中、「豚丼」が売り上げの五割を占めるなど新メニューが軌道に乗り、食材調達や人件費でもコストダウンを図って業績も上向いてきた。今回の“復活”を受け同社は牛丼単品の店舗と、豚丼や定食も交えた店舗を展開していくことを検討。安部社長は「二つのスタイルでやっていけるということは、客層の広がりができ(成長への)可能性は倍増した」と自信を見せる。

 牛丼販売再開を織り込み、〇七年二月期の連結売上高は前期比10・4%増の千三百五十一億円、最終利益は二十二億円(前年は三億八千七百万円の赤字)と大幅改善を見込む。だが、目標を達成できるかどうかは不透明だ。

 ◆牛肉不足

 その第一の要因は、米国産牛肉の調達が十分できず、今後も限定販売にならざるを得ないためだ。日本に輸出が許されているのは月齢二十カ月以下の牛で、以前より処理できる頭数が限られている上、若い牛のため一頭から取れるバラ肉の量も少ない。

 今のところ一カ月で確保できる牛肉は五百トンが精いっぱい。通常販売に戻すには月千五百トンは必要で、そのめどは立っていない。次の牛丼販売は、十、十一月の月初めの五日間だけ。客がどこまで定着するか疑問だ。

 また、今回の販売では並盛りが三百八十円と以前よりも百円高くせざるを得なかった。牛丼用のバラ肉の価格が輸入禁止前より二、三倍高くなっているためという。

 日本への輸出には牛海綿状脳症(BSE)の病原体がたまりやすい特定危険部位を除去しなければならず、こうした“特別仕様”のコストが価格に上乗せされている。消費者は以前の「二百八十円」の印象を強く持っており、この値段が受け入れられるかも不明だ。

 ◆安全論争

 吉野家以外の外食チェーンでは、焼き肉店「でん」が八月二十九日に五十七店舗で米国産牛肉のメニューを復活。用意した四トンの肉は数日で売り切れ、次の入荷待ちの状態。精肉販売が始まった全国数カ所のスーパーでも、即日完売の店が出るなど米国産牛肉の品薄が続く。こうした人気に、輸入に慎重だった食肉輸入業界は「予想以上に需要はある」と驚く。

 安全性の問題については今回、安部社長自らが八月下旬に米国の食肉処理施設を訪問、チェックした。この日の記者会見でも「安全と健康の研究・実践は、業界の中で一番優れているという自負がある。安全性にはまったく不安を持っていない」と力説する。

 しかし、吉野家のライバルである牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーは十四日、「米国における特定危険部位の除去は不完全」とし、あらためて当面は米国産牛肉を使わない方針を表明した。こうした「安全性論争」について消費者がどう判断を下すかも、吉野家が本当に「復活」するかの試金石となる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060919/mng_____kakushin000.shtml